夢幻水滸伝
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第九十六話 仁王像その二
「それだけに力が強い」
「それ故にですね」
「最強の御仏でだ」
それでというのだ。
「魔に強い」
「僕も炎を使いますが」
「明王、特に不動明王の力は絶大でだ」
「あらゆる魔を焼き尽くすのですね」
「その力を思うとな」
「もうそこまでいくと最終兵器だな」
ジャガーマンの男が言ってきた、黒い服とズボンそしてマントがどうにも異彩を放つ感じになっている。
人悪星フェリペ=リサールである、フィリピン出身で職業はギャンブラーそして手には彼の神具であるサン=ジェルマンのトランプカードがある。彼に抜群の幸運を与えしかも投げれば手裏剣にもなり必ず彼の手にカードは戻る。
「強過ぎて」
「その通りだ、孫悟空よりもだ」
「強いかも知れねえのか」
「キリスト教で言うとミカエル、いや」
「神様が怒ったみてえなもんやな」
「そうだ、大日如来は密教で最高位の仏だ」
その座にあるというのだ。
「その御仏の憤怒身だからな」
「強え筈か」
「その持っているものも神具になる位だ」
「そういえばそうだな」
リサールも室生のその話を聞いて頷いた。
「先輩の言われる通りな、棟梁さんも言ってたな」
「リーだな」
「ああ、神具はおいら達の世界のあらゆる神聖な存在だってな」
「その中には御仏の道具もあってだ」
「ブッパースウォング先輩の神具そうだしな」
「それで不動明王の道具もだ」
「神具だな」
「そうなっている、だが不動明王の本当の力はな」
「炎だな」
「そうだ」
それこそがというのだ。
「最大の力でだ」
「それを出すとな」
「文字通りにだ」
まさにというのだ。
「あらゆる魔を焼き尽くすのだ」
「本当に最終兵器だな」
「そうだ、だからこそ日本でも人気がある」
篤く信仰されているというのだ。
「そうなっている」
「成程な」
「そして本堂の中の四天王もですよね」
小柄な森人の少年が言ってきた、膝までのズボンに半袖のシャツは探検家のもので靴を履いている。パプワニューギニア生まれの冒険家マオリ=グレイカスだ。星は人妖星で履いている靴が神具であり空の上も雲の上も海の上もそして海の中も自由に歩けるロキの靴だ。
「強いんですよね」
「そうだ、この世のそれぞれの方角を守護しているだけにな」
「そうですよね」
「やはり強い」
「明王にも負けない位に」
「その通りだ、ただしだ」
ここで室生はグレイカスにこうも言った。
「明王と四天王どちらが強いかという話はな」
「確かなことは言えないですか」
「それこそ特撮や漫画のヒーロ―同士の強さの比較だ」
そうしたものだというのだ。
「比較になりにくくどうとでも言える」
「日本ではそうしたお話が多いですね」
「そうだな、それと同じでだ」
「不動明王と多聞天のどちらが強いか等は」
「言い切れるものではない」
そうしたものだというのだ。
「だから私も言わない」
「どうもですね」
動きやすい中華風の弓兵の身なりの狐人の少年が言ってきた、背は一七五位だ。人捷星アリー=アルフィアンだ。シンガポール出身で職業はレンジャー持っている神具は百発百中であらゆるものを貫く万石弓だ。
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