| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十六話 仁王像その一

                第九十六話  仁王像
 室生はこの時南洋の人の星の者達を東大寺本堂の入り口にある仁王像の前に案内していた。そこにだった。
 仁王像があった、彼はそれを南洋の九人の星の者達に話した。
「この仁王像も起きた時の世界にあるが」
「いや、立派ですね」
 派手な南洋の蝶々の顔と羽根を持ち赤いベトナムの男の民族衣装を着た昆虫人が言ってきた、手には神具である火尖槍がある。人彗星であるカイ=ホアイだ。ベトナム出身であり職業はメイジである。
「何度見ても」
「ああ、怖い顔だがな」
 それでもとだ、ここで言ったのはパラシュという神具である大斧を持つ大柄なフランケンシュタインだった。ラフなシャツとズボンのタイの服を着ている。
 人暴星であるウティット=コープチッティである、タイ出身で職業は山賊だ。
「わしと同じだけ強そうだな」
「ははは、それがしと同じ位ですかな」
 スケルトンで水色の着物と紺色の袴の男が言ってきた。パラオ出身の剣士であるクニオ=モレイだ。腰には彼の神具である村雨丸がある。
「仁王殿の強さは」
「おう、流石に我が棟梁さん達には負けるだろうがな」
 コープチッティはモレイに笑って応えた。
「わしと御前の二人でな」
「互角ですな」
「それ位の強さだな」
「案ずるな、仁王はさらに強い」
 室生は楽しそうに話す二人にこう述べた。
「この顔を見てわからないか」
「顔の怖さならわしも負けていませんで」
 コープチッティは自分の顔を指差して室生に話した、フランケンシュタインらしく縫い跡がありこめかみのところからねじが見えている。
「この通り」
「いい顔をしているな」
「わしがですか」
「人相がいい、仁王の顔は怒りの顔だ」
「ああ、人相でっか」
「仁王は魔に向かう顔だからな」
 それ故にというのだ。
「この世のあらゆる魔のな」
「それ故にこの門の左右にいるのですね」
 カイは仁王達を見つつ室生に問うた。
「そういうことですね」
「そうだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「仁王は我々よりも強い、仏だしな」
「えっ、仏ですかい」
 そう聞いてだ、コープラッティは思わず驚きの声をあげた、そのうえで室生に対して慌てた声で言った。
「それを早く言ってくれたらよかったですが」
「見てわからないか」
「只の門番だと」
「神社の狛犬みたいにか」
「そう思いました」
「タイの仏教と日本の仏教は違うからな」
「それはわしもわかってますけど」
 恐縮した顔でだ、コープラッティは述べた。
「いや、仁王もまた御仏でしたか」
「それは恐れ多い」
 モレイもこう言った、とはいえスケルトンなので他種族に表情はわかりにくい。
「それがしも不遜なことを言いました」
「わかればいい、御仏の力はな」
「わし等なんか及びません」
「どれだけ強いか」
「御仏で最も強いのは不動明王」
 カイは室生の横で述べた。
「そうですね」
「そうだ、大日如来の憤怒身でだ」
 室生はカイにその不動明王の説明もした。
「その力は絶大だ」
「左様ですね」
「その降魔の力でこの世の悪を全て焼き尽くす」
「全てですか」
「不動明王はこの世のあらゆる魔に対することが出来るのだ」 
 そして倒すというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧