八条学園騒動記
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第五百十七話 シマリスの餌その十三
「確かに色々な国があったけれど」
「魔王がやりたい放題の無法地帯じゃなかったね」
「ええ、唐から天竺までの道は」
玄奘が歩いたその道のこともわかっている、苦難の道のりであり本当に命の危険も何度かあった。唐に戻れたことは仏の加護だったのだろうか。
「大変だったけれどね」
「世紀末救世主かっていうと」
「違うから」
パレアナはそこは強く言った。
「それはわかるわよね」
「うん、幾ら何でもね」
ジミーもこう返した。
「西遊記は物語だってね」
「すぐにわかるわよね」
「三国志や水滸伝以上にね」
「ある意味封神演義だから」
「封神演義も凄いよね」
「もう西遊記並に」
それこそというのだ。
「仙人が出て来て仙術も出て」
「あと不思議な道具もだね」
「まさにファンタジー小説で」
この時代でも中華ファンタジーの古典とされている。
「何でもありよ」
「それで西遊記もね」
「何でもありのね」
「そんな作品世界だね」
「だからね」
「そこはちゃんと踏まえて」
「お話の素になった史実とも照らし合わせて」
そうしてというのだ。
「読んでいくといいのよ」
「それもまた楽しみ方の一つだね」
「そうよ、まあそれでもね」
「それでも?」
「私が西遊記読んで一つ思ったことは」
パレアナはジミーにその感想も話した。
「神様も仏様も従者とかの管理が悪いわね」
「魔王は皆従者とか乗りものとかペットだから」
「皆逃げて悪さしてるのよ」
人界に隠れてだ。
「それで孫悟空一行が懲らしめて」
「それで連れ戻すんだよね」
「金閣銀閣にしてもね」
「何やってんのって話だよね」
「ええ、それも物凄く位の高い神仏ばかりだから」
太上老君にしと文殊菩薩にしろだ。
「そう思うわ」
「何か西遊記の話って神様や仏様がうっかりしてるのかな」
「ひょっとしたら三蔵法師並に」
原典では孫悟空達の足手まといに限らないこの人と同じ位というのだ。
「そうかも知れないわね」
「ううん、そう思うと変なお話かな」
「神様や仏様がうっかりしてるね」
「普通ないよね」
「まあギリシア神話の神様って人間臭いけれどね」
その性格はよく言われている。
「西遊記の神様仏様も」
「そうした意味では人間臭いかな」
「完璧じゃないところはね、敵の魔王達も人間臭いしね」
神仏の従者や乗りものだった彼等もというのだ。
「そこも楽しめるわ」
「成程ね」
ジミーはパレアナのその言葉に頷いた、そうしてだった。
ふとだった、パレアナはその手にスマートフォンを出した。そうしてからジミーに対して新たに話すのだった。
シマリスの餌 完
2019・3・25
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