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戦国異伝供書

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第四十三話 関東のことその九

「兵の二割か三割を動かしてじゃ」
「主力とは別に」
「そして何処から川を渡ろうかとな」
「その様にですか」
「向こう側にいる敵に見せつつな」
「惑わすのですか」
 内藤は晴信の考えを察して言った。
「そして敵が惑っているうちに」
「主力はな」
「一気にですな」
「川を渡ってじゃ」
「敵に攻めさせぬのですな」
「若し敵が川を渡る主力を攻めようとすれば」
 その時はとだ、晴信は内藤と他の将帥達にさらに話した。
「惑わしている軍勢がじゃ」
「渡ろうとして」
「動きを止めてな」
「その間にですな」
「主力が渡る、実際敵が主力を攻めようとすればな」
「別に動いている兵はですな」
「川を渡る」
 そうするというのだ。
「そうしてまずは川を渡る」
「そこからですな」
「敵がそこで戦うなら戦いじゃ」
「一旦下がるなら」
「あらためて戦う」
 そうすると言うのだった。
「その様にな」
「左様ですか」
「わしはそう考えておるが」
「それでよいかと」
 山本は晴信の考えに軍師として答えた。
「この度は」
「お主もそう思うか」
「はい、ただ」
「ただ。どうした」
「今からです」
「川を渡る前からか」
「仕込んでおくべきかと」
 こう晴信に話すのだった。
「今から」
「そうか、ではじゃ」
 晴信は山本の言葉を聞いてすぐにだった、考える顔から明るい顔になってそのうえで山本に対して答えた。
「源次郎と十勇士達に働いてもらうか」
「あの者達をですな」
「先に川を渡らせておく」
 幸村を見つつ山本に答えた。
「そしてじゃ」
「惑わせる時は」
「惑わせる兵達と動きを合わさせて」
 そうしてというのだ。
「千曲の川の向こう側で動いてもらう」
「そしてそのうえで」
「相手を惑わせて」
「その隙に」
「全軍で川を渡る」
 これが山本の話を聞いた晴信の考えだった。
「これでどうじゃ」
「打てる手は全て打つ」
「だからな」
「源次郎達も使いますか」
「そうじゃ、して源次郎よ」
 晴信はここで幸村に声をかけって述べた。
「やってくれるか」
「はい」
 幸村は晴信の言葉に明るい顔で応えた、そこに曇ったものは全くなかった。
「さすれば」
「そうか、ではな」
「それではですな」
「お主はまずは十勇士達と共な」
「川を渡ってですな」
「そして敵を惑わしてもらうぞ」
 こう幸村に話した。 
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