八条学園騒動記
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第五百十六話 本をなおしてその十一
「そうしてだ」
「生きていくのね」
「そんな奴には本当にな」
「なりたくないわね」
「若しなればだ」
その時はというと。
「人間としてな」
「終わりね」
「そう思っていてな」
「あんたもシェークスピア読んでるのね」
「読んでわからないとな」
そして学ばないと、というのだ。
「本当にな」
「駄目だけれど」
「あんな風になってたまるか」
洪童は忌々し気に感情を漏らした。
「絶対に」
「そう思ってシェークスピア読んで」
「他にもな」
「学問もしているのね」
「俺なりにな」
「あんたも必死ね」
「必死というかな」
ナンシ―に顔を向けて答えた。
「ああした人間にはな」
「なりたくないって思ってるのね」
「絶対にな」
「人間として駄目だから」
「駄目過ぎるからな」
そう言うしかないからだというのだ。
「本当にああなりたくない」
「親戚に反面教師がいるなら」
「わかるな」
「嫌な気持ちにもなるから」
「何がどうなってもとな」
そう心の中で思ってというのだ。
「今も読んでいるしな」
「これからもなのね」
「あと人生の経験もか」
読書で学問をする以外にもというのだ。
「積んでいかないとな」
「というか経験なら」
人生のそれならとだ、ナンシーは述べた。
「あんたはね」
「どうした」
「いや、もう結構積んでるでしょ」
「そうか」
「その親戚の人を見て」
「それ自体がか」
「だって反面教師を知ることも」
それ自体がというのだ。
「人生の経験でしょ」
「言われてみればそうだな」
「だからね」
「俺はもうか」
「そのことだけでも」
「人生の経験を積んでいるか」
「あんたが望んでいなかったにしても」
それでもというのだ。
「その時点でね」
「そう言われるとな」
「そうでしょ」
「そうだな、言われるとな」
既にとだ、洪童も納得する顔になって答えた。
「そうだな」
「そうでしょ、それで私もね」
「ひいひい祖父さんからその馬鹿のことを聞いてか」
「その分ね」
ナンシーは自分自身のことも話した。
「人生の経験を積んでるでしょうね」
「反面教師を知ってか」
「尊敬出来る人に出会えた方がいいけれど」
「反面教師を知ることもな」
「それはそれで」
「人生の経験か」
「そう思うわ、不愉快な思いはしても」
ああはなるまい、それは軽蔑や侮蔑の感情だ。そうした感情が愉快かというとその筈がないのは言うまでもないことだ。
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