八条学園騒動記
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第五百十六話 本をなおしてその六
「一体」
「優しくて心が広くてな」
「そんな人なの」
「凄くいい人だ、まだ生きていてな」
「あんたにとって大事な人なのね」
「俺は祖母ちゃんが四人いてな」
洪童は笑ってこうも言った。
「死んだのと母方のとな」
「ああ、その母親ね」
「馬鹿な親戚を甘やかしていたな」
「その人お祖母ちゃんだったのね」
「それとな」
「母方のお祖母さんで」
「その大叔母さんと妹さんがだよ」
合わせてというのだ。
「それでな」
「お祖母ちゃんが四人いるっていうのね」
「そうだよ、四人だよ。三人でもいいな」
「死んだ人はカウントしないのね」
「小六から挨拶とか会話しなくなったしな」
そうなったからだというのだ。
「家族と思ってもいなかったしな」
「それで三人ね」
「ああ、それでもいいな」
その死んだ者はカウントせずにというのだ。
「別にな」
「そうなのね」
「とにかくその大叔母さんはな」
この人はと言うのだった。
「俺にとっては鑑なんだよ」
「お手本にしてる人ってことね」
「性別は違うけれどな」
「かくありたいっていう」
「手本だよ、大事にしてるつもりだぜ」
「そんないい人もいるのね」
「ああ」
その通りだとだ、洪童はナンシーに答えた。
「そうなんだよ」
「あんたの家族というか親戚は色々ね」
「碌でもないのもいればな」
「いい人もいて」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「俺はろくでなしだな」
「自分でそう言うの」
「これまで話した馬鹿叔父程じゃないがな」
「それでもなのね」
「ろくでなしだな、大叔母さんにもな」
尊敬するその人にもというのだ。
「お礼を返してないしな」
「これまで可愛がってくれた」
「今もそうしてくれてるからな」
可愛がってくれているというのだ。
「だからな」
「そう言うのね」
「ちゃんとお礼を返さないとな」
「ろくでなしっていうのね」
「本当にな、それでな」
「そうなのね、ただね」
ナンシーは洪童が自分をろくでなしという言葉にはこう返した。
「自分で自分をろくでなしと言う人はね」
「ろくでなしじゃないか」
「そうよ、ろくでなしっていうのは」
本当の意味でのそれはというのだ。
「私が話した馬鹿か」
「俺の親戚か」
「そうした人達でね」
「俺は違うか」
「前に話した人達は本当にね」
他に言い様がなく、というのだ。
「ろくでなしよ」
「正真正銘のだな」
「ええ、けれどね」
「それでもか」
「あんたみたいにお礼を考えている人は」
自分によくしてくれている人へのそれをというのだ。
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