八条学園騒動記
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第五百十六話 本をなおしてその七
「本当にね」
「ろくでなしじゃないか」
「実際にお礼はしてるでしょ」
「全然足りない」
洪童は心から悔やむ声で答えた。
「まだまだな」
「そう言う人はね」
「違うか」
「そうよ、その親戚の人なんて」
「ご機嫌取りみたいなことはするがな」
「本当のところはなのね」
「何度も言うが自分だけの奴だ」
自分のことしか考えない輩だというのだ、こうした輩がこの世から消えることがないのも常である。
「だからな」
「お礼はしないのね」
「したことなんてな」
それこそというのだ。
「見たことも聞いたこともない」
「やっぱりね」
「母親はいい人と言っていたが」
「甘やかしてたから言ってたのね」
「実際はな」
「ろくでなしだったのね」
「犯罪はしないが」
それでもというのだ。
「何度も言うが恩知らずで図々しくて尊大で遠慮知らずでな」
「本当のろくでなしで」
「生きていても害にしかならない」
「そんな人だから」
「大叔母さんにもな」
「お礼なんてしないのね」
「ご機嫌取りはするが」
それでもというのだ。
「そんなことはわかるな」
「まあね、普通にね」
「ゴマをすってもな」
つまりご機嫌取りをしてもというのだ。
「わかるからな」
「自分の為にしていてね」
「決して自分を敬ってはいない」
「そんな人だってね」
「大叔母さんもわかっているしな、それにな」
洪童はさらに話した。
「その親戚に殴ってやろうかと言われた」
「ああ、さっき話した」
「その人がいつも大叔母さんの近くにいるんだ」
それでというのだ。
「それだけでわかるな」
「ええ、もう大叔母さんもね」
「知っていてな」
「呆れてるのね」
「その人だけは見放していないが」
「そのことにも気付かないで」
「あちこちで恩知らずなことを繰り返してな」
洪童が言う様な行いを繰り返してというのだ。
「一人だけ見放していないことにも気付かないでな」
「それでなのね」
「今は行方知れずだ」
「何ていうか本物の愚か者ね」
「そうだな」
「ええ、どうせあんたの大叔母さんも利用しようって」
「思っているだけだ」
「ある意味凄いエゴイストっていうか」
ナンシーは洪童のその親戚についてこうも述べた。
「究めつけにね」
「馬鹿だな」
「エゴイストでね」
そのうえでというのだ。
「馬鹿なのね」
「凄い奴だな」
「ええ、ある意味でね」
「そんな馬鹿でもな」
「たった一人だけなのね」
「大叔母さんは見捨てていないがな」
それでもと言うのだった。
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