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八条学園騒動記

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第五百十五話 洪童の結論その一

               洪童の結論
 洪童は自分が知っているどうにもならない人間のことを話してからだ、彼はナンシーにあらためて話した。
「今話した奴は出来損ないだな」
「そうした人ね」
「どうにもならないな」
「何かプラモの失敗作ね」
「そんな風の奴だな」
 実際にとだ、洪童も答えた。
「俺もそう思う」
「そうよね」
「まあ元々碌でもない奴だった」
「それがなのね」
「一切変わらなかった」
「そのまま大人になって」
「そうなった」
 洪童が今言った様なというのだ。
「そんな奴だ」
「それで私が話した人も」
「出来損ないだな」
「あれ?アナーキスト」
 ナンシーは今も存在しているこの言葉を出した。
「私が話した馬鹿は」
「それだな」
「十九世紀にいたっていう」
「政府や法律を否定してな」
「完全に自由な社会を築こうっていう」
「それがな」
 まさにというのだ。
「アナーキスト、無政府主義者だ」
「そうよね」
「政府も法律も権力もないとな」
「完全な自由ね」
「そうなると思えるが」
 それがとだ、洪童は苦い顔で話した。
「その実はな」
「違うのね」
「完全に自由な社会は漫画であるだろ」
「漫画で」
「あれだ、世紀末救世主だ」
 この漫画のシリーズを話すのだった。
「北斗とかいうな」
「ああ、あのシリーズね」
「あのシリーズはよく核戦争後の世界が舞台になるな」
「あと連合外縁部の荒廃しきった世界とかね」
「西部劇やら日本の戦国時代の僻地やらな」
「あと中国の王朝が変わる頃ね」
「無政府状態の時だ」
 このシリーズが舞台になる時はというのだ。
「モヒカンやら何やらがバイクで走り回ってるな」
「あのシリーズの悪党ってモヒカン多いわよね」
「そうだな、それでだ」
「そのモヒカンがなのね」
「暴れ回っているのがだ」
「無政府状態で」
「そうした連中が言う理想の社会だ」
 そうなるというのだ。
「今言った無政府状態だ」
「それって最悪の世界じゃない」 
 極めて冷めた目になってだ、ナンシーは言った。
「弱い人は碌でもない目に遭って」
「悪い奴がやりたい放題やるな」
「完全な無法地帯で」
「人が生きられる社会じゃないな」
「それこそ世紀末救世主がいないとね」 
 言うまでもなくモヒカン達を文字通りに殺していく者である、その殺し方がギャグなのもこのシリーズの特徴である。
「生きていられないわね」
「しっかりとした権力がなくてな」
「権力が秩序ね」
「そうなっていてだ」
 そしてというのだ。 
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