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八条学園騒動記

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第五百十四話 真理の実行その十一

「大学は努力をしないからな」
「勉強しなくて」
「成績不良でだ」
「それでなのね」
「むしろ高校卒業がな」
 それすらというのだ。
「不思議だと言われてな」
「それ位だったの」
「そこまで努力しなくてな」
「本当に努力しない人だったのね」
「あらゆることにな」
「それで偉そうに言うから」
「どうしようもなかった」
「何ていうか」
 ここまで聞いてだ、ナンシーは述べた。
「幼稚ね」
「そう思うか」
「ええ、幼稚よね」
「そうだな、実際にな」
「子供よね」
「それもどうしようもないな」
「子供のまま身体だけ大きくなって」
 それでというのだ。
「性根が悪いのね」
「性根が悪いというか正しい見方や考え方がな」
 物事に対するそれがというのだ。
「全く出来ないな」
「そんな人ってことね」
「それでああなった」
 まさにというのだ。
「そう言われている」
「母親に甘やかされて」
 そしてというのだ。
「そうなったのかしらね」
「元々酷かっただろうがな」
 人間としてというのだ、子供の頃から。
「それがな」
「母親にも甘やかされて」
「助長したんだろうな」
 その悪い面がというのだ。
「そうした奴だからな」
「どうしようもなくて」
「今はどうしているか、まあ死んだらな」
 その時はというと。
「お役所からな」
「連絡来るわね」
「身元はわかっているしな」
「行方不明にでもなっていないと」
 連合で行方不明は連合の外に出ないとまずない、不法出国者になるかマウリアかサハラに出るかである。
「そうよね」
「連合にいるだろうしな」
「外に逃げてないの」
「そんなタイプでもないしな」
「じゃあそうした施設に入って」 
 浮浪者用のだ、尚こうした施設では就職や住居の斡旋もしてくれる。
「生きてるのね」
「そうだろうな、まあ出来たらな」
「出来たら?」
「このまま死んでくれてもな」
 洪童は冷めた口調で述べた。
「いいな」
「そうなの」
「どっちにしても生きていてもな」
 そうしていてもというのだ。
「害にしかならない様な奴だしな」
「お話聞く限りだとね」
 それならとだ、ナンシーも述べた。
「そうよね」
「そう思うな、ナンシーも」
「だっていいことしてないから」
「実際にいいことはな」
「しないのね」
「自分では一切動かないからな」
 そうした人間だからだというのだ。
「人の家にあがりこんでコーヒー淹れてくれるかだった」
「いや、自分で言うのは」
「駄目だな」
「本当に図々しい人ね」
「そうしてな」
「淹れてもらったの」
「いや、家の人に怒られた」
 そうなったというのだ。
「そうな」
「自分で淹れろって」
「その人の息子さんにな」
「そうなったの」
「お袋は今疲れてるんだってな」
「そんな人に淹れろって言ったのね」
「そんな奴だからな、そして俺はな」
 絶対にという口調でだ、また言った洪童だった。
「そんな奴になりたくない」
「そう思って努力もしてるのね」
「そのつもりだ、こうした本も読んでな」
 こう言ってだ、洪童は本をさらに読んだ。そうしていってシェークスピアから人間のことを学ぶ努力をするのだった。


真理の実行   完


                2019・3・2 
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