八条学園騒動記
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第五百十三話 素晴らしきかな文学その四
「無茶苦茶な人だからな」
「ええ、本当にね」
「けれど面白いからな」
「傍にいても楽しいわね」
「仕えていた連中も楽しそうだしな」
フォルスタッフの従者達だ、こき使われ罵られながらも仕えている。
「何処かな」
「何か他の作品で出て色々言ってたな」
「仕えていると悪くなかったとかね」
「そんなことを言ってたな」
「そんな人でね」
「連合だとそもそも貴族はいないからな」
「だからね」
それでとだ、ナンシーはまた言った。
「普通に愛すべきお騒がせ人物としてね」
「連合ではいられるな」
「そうよね、それでお話戻すけれど」
ナンシーは読みつつ話した。
「正直シェークスピアって内容が濃いから」
「短くても本当に読みごたえがあるな」
「それで渋い作品にこそ」
「オセローにしてもマクベスにしてもな」
「味がある感じがするわよね」
「ハムレットやロミオとジュリエットも有名だが」
それでもというのだ。
「実はな」
「そうした作品よりも渋い作品の方が味がある」
「そんな感じよね」
「そうだな、読んでみると」
「何か別の作家さんみたいな感じもするけれど」
シェークスピアが複数いたという説はこの時代にも存在している、有名な肖像画の人物ではなかったという説もだ。
「華やかな作品よりもね」
「本当にマクベスとか地味な作品の方がね」
「いいな」
「ハムレットとかも面白いけれどね」
「そしてためになるがな」
「それでもね」
そうした要素は確かに存在するがというのだ。
「華やかな作品よりもシェークスピア本来の味がある様な」
「そんな気がするな」
「そうよね、マクベスなんてね」
ナンシーは今読んでいる作品について詳しく話した。
「地味だし暗いしで」
「本当に渋いな」
「けれどね」
そうした作品だからこそという口調での言葉だった。
「そんなのだからね」
「読みごたえがあってな」
「味があってね」
「人生の教訓も学べるな」
「深いものがね」
「オセローもだな」
洪童も今読んでいる作品のタイトルを出した。
「そうだしな」
「オセローも暗いし人間の悪を書いていて」
旗手であるヤーゴだ、当初は生粋の軍人であったと作中にあるがそれが変わったのだ。
「その悪は絶対にばれる」
「そうなのよね」
「そして報いを受ける」
「ヤーゴもそうなったしね」
「フォルスタッフもだしな」
「マクベスもね」
「最後はああなったしな」
マクベスの最後は討ち倒されて僭主、暴君が倒されて万歳となって終わる。一見するとハッピーエンドだ。
「夫人に唆されてもな」
「悪事はしていったしね」
「あれはマクベスの中にな」
彼自身のその中にだ。
「悪があったんだろうな」
「権力欲ね」
「それを悪と言うならな」
権力欲、それをだ。
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