八条学園騒動記

「シェークスピアはな」
「短くてもよね」
「作品の内容が濃い」
　尚赤毛のアンのシリーズもその内容はかなりのものだ。
「とてつもなくな」
「だから読みごたえがあるのよね」
「そういうことだな」
「それでマクベスもね」
　ナンシーが今読んでいる作品もだ。
「読みごたえがあってね」
「オセローもだ」
「そうよね」
「あと俺が今読んでいる巻にはないが」
　洪童はオセローを読みつつ話した。
「ウィンザーの陽気な女房達もな」
「喜劇もね」
「読みごたえがある」
「あんまり長くないけれど」
「面白いしな」
「ウィンザーの陽気な女房達はそれなりに華やかだしね」
「恋愛要素が入ってな」
　若い二人のカップルのそれも話に加わっているのだ。
「それもいいな」
「本当にね」
「ああ、しかしな」
　それでもとだ、洪童はまた言った。
「むしろあの作品は主人公が凄いからな」
「フォルスタッフね」
「あの老騎士殿がな」
「あのキャラは凄いわね」
「もう何かとだ」
　それこそとだ、洪童はこのキャラクターのことを話した。
「とんでもない人だな」
「女好きで酒好きで図々しくて無反省でね」
「とんでもない人だな」
「けれどね」
　そうした人間として問題点ばかりの人物だが、というのだ。
「憎めないのよね」
「不思議とな」
「ああした人が傍にいたら迷惑でもね」
「退屈はしないな」
「歌劇を観たら」　
　これはヴェルディのファルスタッフのことだ、別の作曲家がシェークスピアのタイトルそのままで作品にもしている。
「原作以上に痛快でね」
「ああ、ヴェルディのだな」
　洪童もその作品は知っていた。
「一年の時学園の歌劇場で観た」
「そうだったの」
「歌劇に詳しいと女の子にもてると聞いてな」
「それでなのね」
「カムイと一緒に観たが」
　それでもというのだ。
「面白くてな」
「もてることとは別にだったのね」
「頭に入った」
「それはいいことね」
「ああ、とにかくあの騎士殿はな」
「騎士って嫌なイメージあるけれどね」
　ナンシーは笑って話した、これは連合に共通しているイメージだ。騎士は貴族階級にあるからである。
「高慢でふんぞり返った」
「そんな連中だな」
「まあ大抵の騎士はそうらしいけれどね」
「その癖モンゴル帝国に惨敗したな」
「そう、弱かったのよね」
　リーグニッツの戦いのモンゴル帝国の彼等に対する圧勝は連合では騎士への嘲笑にもなっているのだ。
「数も少なくてね」
「まとまりもなくてな」
「そうだったけれど」
「あの騎士殿はな」
「連合にいてもいいわね」
「流石にあんな人は滅多にいないな」
　フォルスタッフの様な人物はというのだ。