八条学園騒動記
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第五百十三話 素晴らしきかな文学その五
「悪だな」
「そうよね、その悪を夫人に見透かされて」
そうしてだったというのだ。
「それでね」
「悪人として倒されてな」
「終わってね」
そしてと言うのだった。
「やっぱり悪事はばれる」
「そうなったな」
「ええ、そして」
そのうえでと言うのだった。
「悪人と評価を受けて終わる」
「それが現実だな」
「それもわかるからね」
「悪人っていうのはな」
それはとだ、また言った洪童だった。
「最後はばれてな」
「裁かれる」
「それもシェークスピアは書いてるよな」
「世に悪が栄えた試しなし」
「本当にそうだな」
「それを書いているのが」
まさにとだ、さらに言うナンシーだった。
「渋い作品の方がね」
「より描けている感じがするな」
「恋愛が前に出ていると」
シェークスピアは、というのだ。
「何かそういうのがね」
「あってもな」
「前に出ていないのよね」
「そうだな」
「何で悪人になったかもね」
「あまり書かれないな」
「あと殆どの人が悪人って思っていても」
それでもというのだ。
「そこにある背景があったりとかね
「リア王でもあったな」
「あの腹違いの弟ね」
「リア王の側近のな」
「手段を選ばない狡猾な悪人だけれど」
そして物語の最後の方で志半ばにして倒れる、これもまた悪は結局は断罪されるということであろうか。
「そうなったこともね」
「シェークスピアは書いてるからな」
「リア王って正直言って」
ナンシーはここでは自分が思っていることを率直に話した。
「馬鹿な人よね」
「本当にそうだな」
「誰が自分を大事に思っているかわからずに」
「嫌われる様なことをしていてな」
「そうした人でね」
「俺も思う」
洪童はオセローを読みつつ述べた。
「リア王は愚かな人だ」
「そうよね」
「オセローも愚かだが」
「リア王とどっちが、かしらね」
愚かか、というのだ。
「本当に」
「どっちもな」
「どっちかしらね」
「二人共その愚かさ故にな」
「あの結末だしね」
「まさにな」
二人共、というのだ。
「自業自得だな」
「愚かっていう意味だとね」
「本当にそうだな、それでリア王はか」
「確かに馬鹿だけれど」
ナンシーはこう表現した。
「可哀想な人よね」
「あの結末はな」
「何もかも失ってだからね」
「彷徨って娘さんまで失ってな」
コーデリアのことだ、リア王を最も愛していたがその結末は実に悲しいものだった。
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