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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百二十七話 共演してその七

「それはまた」
「その家の娘で。武家の教育を今も受けていてね」
「覚悟を決めた人ですか」
「そうなの、恰好よくてね」
「貫禄があるんですか」
「武家の娘っていうと」
 そうした話になると、というのだ。
「わかったわ」
「その人のことも思い出して」
「それでよ、いや本当にね」
「本当にといいますと」
「十八歳でもね」
 日菜子さんと同じ年齢だ。
「覚悟があるとね」
「ああなるっていうんですね」
「蝶々さんみたいにね」
 まさにというのだ。
「そう思ったわ」
「そうですか」
「逆に覚悟がないと」
 蝶々さんと逆にだ。
「中尉さんみたいになるわね」
「あの人に覚悟はないですね」
「どう見てもそうよね」
「はい、覚悟がないから」
 それ故にとだ、僕は日菜子さんに答えた。
「第二幕で逃げていますね」
「一旦ね」
「そこが日菜子さんにとってはですね」
「殴りたい理由の一つなのよ」
「そうですよね」
「男ならとか言わないけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりね」
「覚悟がないとですね」
「駄目よ。軽薄に結婚して」
 第一幕を見ると非常に軽く考えているのがわかる、あちこちで所謂現地妻を持ってそのうえでである。
「それで自分がしたことに気付いて」
「逃げるから」
「本当に覚悟がないのがわかるわ」
「そんな人はですね」
「本当に駄目よ」
 それこそというのだ。
「あたしとしてはね」
「それで今も言われるんですね」
「そうよ、それで蝶々さんはね」
 覚悟があるこの人はだ。
「いい意味で大和撫子ね」
「今はその言葉も」
「結構なくなってるわよね」
「蝶々さんみたいな人は」
「可憐でいて芯のあるね」
「そうした人はそうそういないですね」
「そうよね。ただ大和撫子って」
 それは何かともだ、日菜子さんは僕に話してくれた。
「貞淑で優しくて気品があって」
「家事も出来て」
「それでいて芯が強い人よね」
「まさに蝶々さんですね」
「こんな人昔からいたかしら」
 日菜子さんはジュースを飲みつつ僕に話してくれた。
「果たして」
「いなかったかもですか」
「だって江戸時代とかね」
 この時代はというと。
「武家の娘さんはきりっとしてて」
「蝶々さんみたいに、いや」
「ちょっと違う感じでしょ」
「はい、蝶々さんとは」
 伝え聞く武家の娘さんはだ。
「何か」
「蝶々さんは芸者さんだったからね」
「武家が零落して」
「そうだったからね」
「純粋な武家の娘さんじゃないですね」
「またね、純粋な人はね」
 純粋な武家の娘さんはだ。 
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