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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百二十六話 マダム=バタフライその十四

「周囲から迫害を受けてな」
「酒浸りになってでしたね」
「どうしようもなくなってな」
「そうしてでしたね」
「最後は自ら死を選んだ」
「それで死んでからもでしたね」
「墓を建てるなとか言われていた」
 心優しい住職さんがせめてもと思って弔おうとしたらだ。
「そうなっていた」
「そう思いますと」
「お吉さんは創作のうえでもな」
「幸せになっていいですね」
「そう思う」
「そうですね、本当に」
「そして蝶々さんもな」
 蝶々夫人もだった。
「実はリハーサルの途中だが」
「ハッピーエンドの話がですか」
「出ている」
「そうですか」
「難しいと思うが」
「ストーリーに無理が出来ますね」
 ピンカートン中尉は奥さんを連れてきているのだ、アメリカ人の。それが蝶々さんが自害する決意を促す一因にもなっている。
 このことがあるからだ、あの作品もだ。
「幸せにするとなると」
「無理はあるな」
「そうですけれど」
「しかし結末が悲し過ぎるとな」
「そうした声が出ていますか」
「だからだ」 
 それでと言うのだった。
「結末はどうなるかわからない」
「そうですか」
「無理があっても幸せであるべきか」
 腕を組んでだ、井上さんは僕に言った。
「無理なく悲しい結末のままか」
「難しい二択ですね」
「そうだな、しかしどうなるか」
「それよりもな」
「ここはだ」
 まさにと言うのだった。
「じっくり考えたい」
「そうしてですね」
「決めたい」
 井上さんは僕にこうした話もした、そしてだった。
 僕達は一旦別れた、そうしてからだった。
 僕は自分のクラスに戻って自分の仕事に戻った、それから自分の仕事に励んだ。文化祭はまだはじまっていないけれどもうその中にいる感じだった。


第二百二十六話   完


                   2019・3・1 
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