八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百二十六話 マダム=バタフライその六
「そして発言も実行もしたからな」
「本当に言い逃れが出来ないですね」
「しかも日系人の中には殺された人もいる」
「収容所から脱走しようとして撃たれたり」
「収容所の待遇は刑務所並だった」
つまり犯罪者と同じだとされたのだ。
「ここまですればな」
「本当に批判されて当然で」
「仮に弁明してもだ」
「事実がありますから」
「だからだ」
その為にだったのだ。
「彼は批判された、そしてだ」
「その批判から逃れられなかったのですね」
「大戦後アメリカは人種差別を否定しだした」
少なくとも一九二〇年代の移民排斥運動もなくなっていたしキング牧師達の黒人の権利拡大運動も起こっていた。
「そこで彼は槍玉に挙げられた」
「そうなりましたね」
「そうだ、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「批判されたが」
「それが報いでしたか」
「しかしその報いの中でだ」
世論による批判を受けつつだ。
「その中でだ」
「ことを果たしたんですね」
「そうだった」
まさにというのだ。
「黒人の権利を保証してだ」
「その未来を開いたんですね」
「最高裁判事になっていた」
カルフォルニア州知事から副大統領候補になりそしてだったのだ、苦学して弁護士からそうなったのもアメリカンドリームであろうか。
「そしてその立場からだ」
「白人と黒人を分けることはですね」
「違憲と判断した、そしてこの判断がだ」
「公民権法の確立に貢献しましたね」
「彼は十万の日系人への迫害を行った」
それも積極的にだ。
「そのことへの報いを受けてだ」
「そして黒人の未来を開いた」
「二千万のな」
「複雑ですね」
「そうだな、私はこの人物を日系人のことでは批判するが」
実際に会えば糾弾するというのだ。
「黒人のことでは称賛する」
「キング牧師やマルコムエックスと同じだけ貢献していますね」
「偉大な貢献だ」
「そうですよね」
「キング牧師やマルコムエックスは偉大だ」
この人達が動いて黒人の権利は拡大された、その貢献を偉大と言わずして何と言うかということになる。
「しかしだ」
「その人もですね」
「偉大な貢献をしたのだ」
「そう言っていいですね」
「そしてピンカートン中尉もお子さんを大事に育てるとな」
「そのことはですね」
「称賛出来る」
蝶々さんにしたことが幾ら酷くてもというのだ。
「そうだったならな」
「そうですね、ただ」
「ただ。どうした」
「いや、大学の歌劇部ですけれど」
八条大学のだ。
「蝶々夫人もよく上演していますけれど」
「人気作だからな」
「プッチーニの作品の中でも」
「ラ=ボエームと並ぶ」
あとトスカも人気がある、プッチーニは歌劇の歴史において名作を次々に生み出した素晴らしい作曲家の一人だ。
「そうですよね」
「そうだ、それだけにだ」
「うちの大学でもよく上演されますね」
「はい、ですが」
それでもだ、僕にとっては。
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