八条学園騒動記
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第五百九話 ラッコ達その十一
「もうだ」
「のどかなのね」
「そんなお国柄だ」
「成程ね」
「皆遊んで飲んでな」
「夜はそうして過ごすのね」
「夜働く人は朝そうしている」
そうした人達はその時間にというのだ。
「とにかくだ、のどかなお国柄でな」
「働いた後はゆっくり休むのね」
「勤務時間外まで働くことはしないな」
「仕事が終わったら遊びね」
「寝るまでな」
「ううん、結構日本人ってね」
「この時代でも忙しいな」
二十世紀の様にエコノミックアニマルと言われることはないし過労死も極めて少なくなっているが働き者の込む民生は同じということか。
「いつもな」
「凄い働いてるけれど」
「同じ日系国家でもな」
「そこは違うのね」
「アイヌ人は働く方だがな」
「そういえばカムイもね」
よくいい加減なほうだと言われる彼もというのだ。
「あれでね」
「いつも勉強しているな」
「わりかし成績いいのよね」
尚ダンもナンも成績は悪くない。
「頭いい方よね」
「アイヌ、北海道は開拓地だったからな」
「ああ、日本人が移住して」
明治維新以降のことである。
「そうしてね」
「そうだったからな」
「頑張って開拓したから」
「アイヌ民族も怠け者ではなかった」
彼等もというのだ。
「いつも首領や漁業に頑張っていた」
「そのアイヌ人と日本人の国だから」
「勤勉な方だ、だが琉球はな」
「日系国家の中でのどかなのは」
「島国でな、何でも来るものは受け入れて食べものも豊富な方だった」
「周りが海だからお魚とか一杯獲れたのね」
「田畑も豊かだったしな」
ダンはナンにかつての琉球王国の頃の自国の話をした。
「あと交易も盛んだった」
「恵まれていたから」
「もうあくせくしないでな」
「のどかになったのね」
「そう言われている」
「成程ね」
「働くことは働く」
つまり決して怠け者の国民性ではないというのだ。
「それはな、しかしな」
「日本人やアイヌ人とは違うのね」
「やはりあくせくしないでな」
「のどかってことね」
「そうだ」
実際にというのだ。
「そうした国民性だ」
「まあのどかはモンゴルもだけれど」
それでもとだ、ナンはダンに話した。
「琉球ともんごるののどかの土壌って違うわね」
「草原の暮らしは厳しいからな」
「ええ、そう言われてるから」
ナンとしては普通の生活なので自覚はない、だが周囲の意見から言うのだ。
「もう周りは草原でいつも広い中にいるから」
「のどかか」
「そうなったのね、時間の流れが違うのよ」
それが例え同じ時間であってもだ。
「一分一秒じゃないのよ」
「一時間でもないな」
「一日ね」
「その時間の単位だな」
「今日するか、明日するか」
「そうした感じだな」
「今日は何処に向かう、明日は馬の乳を搾るとか」
そうした感じでというのだ。
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