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夢幻水滸伝

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第八十九話 東国統一その六

「鰻の血、魚の血は飲まねえな」
「味がね」
 どうにもとだ、麻友は幸田にそのことについて微妙な顔で答えた。
「どうもね」
「好きじゃねえのか」
「生臭いんだよ」
 魚の血はとだ、麻友も鰻丼を食べつつ答えた。
「どうもね」
「だからか」
「そうだよ、だから魚の血はね」
「飲まねえんだな」
「そうなんだよ」
「そうかい、好き嫌いがあるんだな」
「吸血鬼でもね」
 生物の血を吸いそれを己の栄養と出来る種族でもというのだ。
「あたしは牛や羊の血が好きだね」
「それをジュースみてえに飲んでるよな」
「もっと言えばお酒みたいにね」
 そうした感じでとだ、麻友は自ら幸田に話した。
「そんな感じでね」
「飲んでるんだな」
「そうだよ、それで吸血鬼でもね」
「それぞれ好みがあってか」
「あたしは牛や羊でね」
「魚は駄目なんだな」
「そうなんだよ、これが」
 幸田に丼の飯を鰻とタレの味で食いながら言うのだった。
「どうもね」
「色々あるんだな、吸血鬼も」
「そうなんだよ、それでね」
「それで?」
「食べること自体はね」
 それはというと。
「結構色々とね」
「食えてるよな」
「この鰻だってね、食べてね」
「楽しんでな」
「料理人として味も学んでるんだよ」
 そうした意味でも食べているというのだ、この辺り麻友は自分の職業のことをしっかりと頭の中に入れていると言えた。
「いつもね」
「料理人は食うのも仕事だっていうからな」
「舌で覚えてね」
「そしてだよな」
「その舌が覚えた美味しさを再現して」
「その味以上にだな」
「美味しものを生み出すんだよ」
 そうしていくものだというのだ。
「それが料理人ってやつなんだよ」
「そうなんだな」
「それとね」
 さらに言う麻友だった、鰻を食ってその舌で味を覚えながら。
「どんなものでもね」
「食うことか」
「例えば鰻だったらパイがあるじゃない」
「おう、欧州の方にな」
「日本じゃ浜松名物でね」
「あれを食ってもか」
「いいんだよ、スペインでも鰻よく食べてるけれど」
 欧州全体で比較的よく食べていると言える、その理由は簡単で鰻が実に美味い魚であるからに他ならない。
「こういうのも食べるといいんだよ」
「色々な鰻料理食ってか」
「勉強することもね」
 そうしたこともというのだ。
「いいんだよ」
「和食にこだわらずってことか」
「そうだよ、そうして色々な美味しいものを生み出すんだよ」
「それが料理なんだな」
「そうなんだよ、あたしこっちの世界じゃ料理人だから」
「料理のことをか」
「とことんね」
 そこまでというのだ。 
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