夢幻水滸伝
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第八十九話 東国統一その七
「勉強してよくしていきたいね」
「すげえな、そこまで考えてるんだな」
「こんなの当然じゃないかい」
麻友は自分を誉める幸田に笑って返した。
「だってあたし吉君のかみさんになるんだよ」
「だからか」
「奥さんになったらずっと御飯作るだろ」
「おいらも作れるぜ」
幸田は笑って言う麻友に自分も笑って返したが麻友が女の子の顔での笑顔だったのに対して幸田は男のそれだった。
「それもインスタントじゃなくてな」
「しっかりとだね」
「おう、作れるだろ」
「それはあれじゃない」
麻友は自分で豪語する幸田にすぐに反論した。
「男の人の料理じゃない」
「おう、おいら性別は男だからな」
「それじゃあ趣味で味はよくてもね」
「味がいいならいいだろ」
「駄目だよ、お金のことも考えないと」
「金がかかると駄目なのかよ」
「これは家庭でもそうでね」
そこで作る料理もというのだ。
「お店のお料理もなんだよ」
「金がかかったら駄目か」
「かかり過ぎたらね」
そうなってしまえばというのだ。
「よくないんだよ」
「料理人ってのはそこまで考えねえと駄目か」
「そうだよ、ちゃんとね」
「そりゃまた随分と難しいな」
「難しくてもだよ」
それこそというのだった、麻友にしても。
「ちゃんと出来ないと赤字だよ」
「じゃあこの店もか」
「そうだよ、いいお米と鰻を使って」
それでというのだ。
「秘伝のタレ、けれどそれに見合うだけのね」
「価格で売ってるってんだな」
「このお店結構高いじゃない」
「おう、鰻屋でも高い方だな」
実際にとだ、幸田も答えた。
「ここはな」
「それだけのものがね」
「あるんだな」
「さもないとすぐにだよ」
赤字になってというのだ、店の経営が。
「お店やっていけなくなるよ」
「美味いだけじゃ駄目なんだな」
「駄目駄目、美味しくて儲かってないとね」
「店はやっていけねえか」
「そうだよ、悪く言えば味はそこそこでもね」
「店のものが売れてたらか」
「お店はやっていけるんだよ」
そうしたものだというのだ。
「こっちの世界だと手頃に立ち食い蕎麦だね」
「この世界の江戸にも多いな」
江戸時代の江戸にも多かった、立ち食いの蕎麦や屋台のそれは江戸時代からはじまったものなのだ。
「おいらもお忍びで出たらよく食うしな」
「作り置きでさっと茹でるじゃない」
「そうして出すな」
「味はそこそこでね」
「美味いけれどな」
「ああしたお店は味はそこそこで」
それなりに美味しくてというのだ。
「安くて早くじゃない」
「言うならファーストフードだな」
「それだよ、ファーストフードだったらね」
そうしたお店ならというのだ。
「もうどれだけそこそこで安いものを早く沢山売るか」
「そうした勝負か」
「もうそこはね」
「その店それぞれの勝負なんだな」
「そうだよ、あと東国は名物多いね」
このことも言う麻友だった。
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