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八条学園騒動記

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第五百九話 ラッコ達その五

「アイヌ連邦は熱帯もあるがな」
「その領有している星の中に」
「しかしアイヌ人は元々寒い地域にいた」
「蝦夷、北海道よね」
「あの島は寒かった」
 日本の中で最も寒冷な地域であった、その為明治維新以降の開拓には苦労もしてきたのは日本の歴史に書かれている通りだ。
「だからアイヌ人もな」
「寒い地域にいて」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「今も文化的にはな」
「寒い地域のものなのね」
「食文化もそちらが軸だ」
「海胆とか烏賊とか好きなのね」
「そしてその海胆や烏賊がな」
 こうしたものがというのだ。
「ラッコの好物だからな、帆立貝もな」
「ううん、カムイの気持ちがわかってきたかも」
「ラッコはアイヌ連邦では象徴の一つだ」
「そうした生きものなのね」
「ヒグマ、キタキツネ、ナキウサギと並ぶな」
 それだけのというのだ。
「アイヌ連邦の象徴だからな」
「嫌われてはいないのね」
「カムイも嫌いではないがな」
「食べることについては」
「言いたいことがある」
「美味しい海胆や烏賊は自分が食べたい」
「そういうことだ」
 ダンは強い言葉で述べた。
「あいつもそれなりの理由がある」
「そういうことね、けれど」
「それはだな」
「いや、モンゴルにはあまり縁のないお話ね」
「モンゴルの漁業でもか」
「うん、本当にね」
 実際にというのだ。
「日系国家みたいなものじゃないのよね」
「海胆もあまり食わないな」
「そうなのよね、食べることは食べても」
 それでもというのだ。
「あまりね」
「日本や琉球、アイヌよりはか」
「全然食べないわね」
 こうダンに話した。
「だからラッコとの食べものの取り合いも」
「わからないか」
「これが狼ならわかるけれどね」
「しかしモンゴル人は狼を狩らないな」
「狼と鹿はね」
「さっき話した通りだな」
「だからご先祖様だから」
 元朝秘史の冒頭に書かれている様にというのだ、ただしこれは言うまでもなく信仰トーテミズムのものである。
「狩る訳にはいかないのよ」
「そういうことだな」
「狩ったら逮捕されなくても」
「それでもか」
「かなり顰蹙喰らうわよ」
 モンゴルの中でというのだ。
「村八分っていうかね」
「こっちの言葉でだな」
「そんな扱いになるわよ」
「ご先祖様を殺したからか」
「そう、最大の悪事だから」
 それこそというのだ。
「宗教的にはね、ただこれはね」
「モンゴル人の精霊信仰だな」
「モンゴルも多宗教だから」
 このことはモンゴル帝国からのことだ、ラマ教に深く傾倒していったがイスラム教徒も増えていったのだ。
「ムスリムの人もいればキリスト教の人もいるし」
「精霊信仰だけでもないか」
「精霊信仰はあっても」
 それでもというのだ。
「ラマ教と同時信仰が大抵ね」
「連合らしいな」
 複数の宗教を同時に信仰することはとだ、ダンも述べた。 
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