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八条学園騒動記

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第五百九話 ラッコ達その六

「連合の宗教人口は今は十六兆だったか」
「どんどん増えていくわね」
「一人が複数の宗教を信仰するからな」
「そうなっていくのね」
「流石にムスリムでは難しい様だが」
「ユダヤ教はもっとね」
 尚キリスト教では特に言われない、カトリックとプロテスタントを同時に信仰している者もいたりする。
「そうだけれどね」
「モンゴルも多宗教国家でか」
「別に精霊信仰でないとね」
「狼を狩ってもか」
「まあいいかなってなるのよ」
 信仰の関係でそうなるというのだ。
「そこはね」
「寛容だな」
「ただ。ムスリムの人も狼は大事にするわね」
「あの宗教は狼は好きだな」
「犬は好きじゃないけれど」
 犬の唾液を不浄としているからだ、これは犬の唾液と狂犬病の関係からだ。尚日本の作家泉鏡花もこれと同じ理由で犬を嫌っていた。
「狼はね」
「いいんだな」
「そうなのよ、ちなみに猪食べないわよ」
「豚だからだな」
「そうなの、何はともあれ狼はね」
 家畜を狙うがというのだ。
「イスラムの人も好きよ」
「それで狩らないか」
「基本ね」
「基本か」
「あくまでね」
「絶対でもないか」
「だってイスラムだとね」
 この宗教ではというのだ。
「トーテミズミないから」
「祖先崇拝もか」
「そう、イスラムの信仰はアッラーでしょ」
「あの神様に向けられるものだな」
「そうした宗教だから」
「祖先崇拝よりもか」
「動物がそうだって考えもないし」
 人もまたアッラーが創り出した、コーランにも書いてある。そしてコーランでは人に原罪はないともしている。
「だから基本よ」
「あくまでそうか」
「そう、そしてね」
 それでとだ、ナンはさらに話した。
「宗教が違うって言ったら」
「それで通じるな」
「モンゴルでもね」
「だからムスリムの人が狼を狩ってもか」
「いい気分はしなくても」
 内心そうでもというのだ。
「口には言わないわ」
「宗教の違いは仕方ないからな」
「そう、流石にチンギス様を馬鹿にすることは誰もしないけれど」
「モンゴルにいるとか」
「だってモンゴル最大の偉人で英雄だから」
 そうした存在だからだというのだ。
「神様にもなっているし」
「モンゴル人ならだな」
「絶対に悪く言わないわ」
「そこは違うな」
「ええ、ただろまんあるでしょ」
 ナンはダンに笑ってこうも話した。
「祖先が蒼き狼と白き牝鹿とか」
「それはな」
「恰好いいしね」
「モンゴル人らしいと思う」
「男の人が誇り高き狼でね」
 そしてとだ、ナンはさらに話した。
「女の人が心優しい鹿なのよ」
「そうなるな」
「そう、まさにモンゴル人はね」
「狼と鹿か」
「そう信じられているのよ」
 彼等の末裔だというのだ。 
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