八条学園騒動記
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第五百七話 無抵抗その二
「海を見ること自体中々だったし」
「中国やイスラムに侵攻してか」
「それからだったから」
つまりかなりの規模になってからだったのだ。
「そんな風だったから」
「ステラーカイギュウはそもそも食べなかったか」
「そして食べるにしても」
「不必要に殺さなかったか」
「エウロパの連中みたいにね」
「連中は本当に野蛮だからな」
「もう目に入ったものは狩る感じね」
食べる分以上にというのだ、これもまた連合の中で定着してしまっているエウロパへの偏見である。
「本当に野蛮な連中ね」
「全く以てそうだな」
「こんな生きものを絶滅させるとか」
ステラーカイギュウ達だけでなくオオウミガラス達も観ての言葉だ。
「逃げなくて戦わないのに」
「ステラーカイギュウもオオウミガラスも警戒心がなかった」
「それをいいことに狩っていたのね」
「絶滅させる位にな」
「連合は無抵抗な相手を攻撃しないわよ」
「狩らないな」
「連合市民はね」
ただしいじめっ子は別だ、尚連合ではいじめは傷害罪暴行罪が適用され悪質な場合は公開で麻酔なしの手足切断や断種手術が行われたりもする。若しいじめた相手が自殺すれば凌遅刑や火炙り、車裂き、逆さ鋸引きといった極刑が待っている。
「しないわよ」
「連中は植民地統治でもそうだったな」
「現地の人達遊びで殺してたしね」
「嬉々として蛮行を働く連中だ」
「十字軍といいね」
「そんな連中だからな」
「ステラーカイギュウもオオウミガラスも滅ぼしたのね」
無抵抗で逃げもしない無力な相手をというのだ。
「何が貴族で騎士なのかしらね」
「野蛮で残虐だな」
「本当にそうよね」
「しかし俺達は違う」
連合はとだ、ダンは言い切った。
「だからだ」
「無駄に殺生はしないわね」
「食ってもな」
「食べる分だけ狩るし」
「家畜の方もそうだ」
必要な分だけ肉にするというのだ。
「そうしている」
「それが私達よね」
「何でも食うだの貪るなど言われるが」
エウロパ側の言葉である。
「それはな」
「偏見よね」
「あくまで食うのは必要な分だけだ」
そこは守っているというのだ。
「それは絶対だ」
「それで何処が野蛮で貪っているのか」
「わからないわね」
「全くだ」
「そうよね。しかしステラーカイギュウって観ていると」
巨体でのゆったりとした動作をとだ、ナンはダンに話した。
「癒されるわね」
「そうだな」
「それもかなりね」
「実際にそちらで人気がある」
「癒し系の生きものね」
「そうだ」
まさにとだ、ダンはナンに答えた。
「外観と仕草でな」
「オオウミガラスは可愛い系でね」
「観ていていいな」
「かなりね」
実際にとだ、ナンはあらためて答えた。
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