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八条学園騒動記

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第五百七話 無抵抗その一

               無抵抗
 ナンはベンチに座ったうえで自分の隣に座っているダンに対して深く考えている顔でこうしたことを言った。
「ステラーカイギュウもオオウミガラスものどかね」
「おっとりしているな」
「そうよね、癒されるわ」 
 観ていてというのだ。
「本当に」
「そうだな、こんな生きものに悪いことをしたら駄目だな」
「モンゴル人もね」
「そうしたことはしないか」
「モンゴル人は狩りはするけれど」
 それでもというのだ。
「無闇に殺すことはしないのよ」
「無駄な血を流さないか」
「あくまで必要なだけよ」
「それ以上は殺さないか」
「そんなことしていたら」
 それこそというのだ。
「家畜も獲物もいなくなるでしょ」
「だからだな」
「無駄には殺さないのよ、もんごる帝国だって」
「よく破壊と殺戮の限りを尽くしたと言われるな」
「エウロパとかからね」
「しかしだな」
「実際は逆らう相手にだけだったから」 
 いつもではなかったというのだ。
「逆らう相手には微塵も容赦しなかっただけで」
「いつもじゃなかったな」
「従う相手にはね」
 そうした相手にはどうだったかというと。
「物凄く寛容だったから」
「それならだな」
「そうよ、だからね」
「世界帝国にもなったな」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「ただ無茶苦茶強くて怖いだけだとね」
「世界帝国にはならないか」
「宗教も民族も文化も差別しなかったのよ」
 そうしたことではというのだ。
「有能だったら結構取り立てたしね」
「宗教や文化で差別しなかったか」
「中華もイスラムも何でも受け入れたし」 
 宋を滅ぼし中華世界も征服した、確かに漢民族を高級官吏には取り立てなかったが漢民族の文化や宗教に一切規制は加えなかった。
「キリスト教だってね」
「認めていたか」
「そうよ、寛容だったから」
「世界帝国になってか」
「今も語り継がれているのよ」
「鬼の様に強く情け容赦ないと思っていたが」
「だから逆らう相手にそうだっただけよ」
 あくまでというのだ。
「無駄な殺生はしないから」
「必要と思ったら殺してもか」
「そうよ、その時は確かに街全部消し去ったりしたけれど」
 バグダートのそれが有名だ、街は何もかもがなくなりこの時にアッバース朝も滅んでしまっている。
「従うなら本当に寛容だったから」
「無駄な殺生もせずにか」
「若しステラーカイギュウが目の前にいても」
「何もしないか」
「というか昔のモンゴル人が海のものを食べたか」
 それはというのだ。
「その時点で疑問だから」
「そう言われるとそうだな」
「あくまで草原の人達だから」
 このことは絶対だというのだ。
「草原のものを食べて生きているから」
「海のものはか」
「見てもね」
「食べものとは考えないのか」
「ええ、お化けかって思うかもね」
「それはまた極端だな」
「だから海とは無縁だったから」 
 モンゴル帝国はあくまで草原即ち大陸の帝国だった、シーパワーとはほぼ無縁でその為元寇も失敗している。 
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