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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百十一話 紅葉が見えてその四

「人として」
「けれどヴィオレッタが娼婦だからって言ってないな」
「駄目とかね」
「一度もな」
 作中でそれは一度もない、振られたと思って派手に侮辱する場面はあってもだ。この時も正々堂々としていた。
「だから嫌いじゃないがな」
「ヴィオレッタを人間として見ていて」
「穢れてるとか言わないだろ」
「全然ね」
 このことは確かだ、侮辱する時でも。
「あくまでね」
「ヴィオレッタを人として見ていてな」
「愛して怒って戻ってきて」
「だから嫌いじゃない、それでな」
「アルフレードなら」
「確かに困ったところもあるけれどな」
 そのヴィオレッタを侮辱したことだ、もう完全に若気の至りの場面だ。
「あそこまで必死に愛せるなら」
「いいんだね」
「そう思う、俺はな」
「アルフレードまでは」
「ヴィオレッタみたいな人でもな」
 それでもというのだ。
「好きになれないだろうし」
「愛するにしても」
「俺はそこまで立派じゃない」
「そう思うんだ」
「あそこまで素晴らしい心だとな」
「ううん、大場君凄くね」
 僕は彼のその言葉を聞いて述べた、言いながら今自分の顔が自然と考えるものになっていると自覚した。
「椿姫好きなんだね」
「中学二年の時にはじめて観てな」
「それからなんだ」
「娼婦だからって何だって思ってな」
「心が素晴らしいと」
「仕事なんて関係あるか」
 よく社会的立場がどうとか言われる仕事でもというのだ、事実ヴィオレッタはアルフレードの父親に第二幕で娼婦で息子と付き合うと娘つまりアルフレードの妹の結婚に影響するから別れてくれと言われている。けれどこの父親もすぐにヴィオレッタのことは理解してくれたし最後は二人の交際を認めた。
「過去なんて誰だってな」
「あるよね」
「奇麗な過去ばかりじゃないってな」
「よく言うね」
「俺だってだよ、悪いことをして怒られて」
 大場君は自分のことも話した。
「ほじくり返される様なことがな」
「一杯あるんだ」
「あるさ、そう思うとな」
「ヴィオレッタが娼婦ってことは」
「言う奴はそんなに立派か?」
 アルフレードの父親への言葉じゃないことはわかった、これは娼婦という職業に偏見を持っている人達への言葉だった。
「それで過去はないのか?」
「悪い過去は」
「今だってそんなに立派か」
「そう言われるとね」
「絶対にそうだって言える奴はな」
 それこそというのだ。
「自分がわかっていない奴だよ」
「だからだね」
「そんなことが言えるんだよ」
「ヴィオレッタが娼婦だからって」
「あれこれな」
「そう言われると」
「そんなこと言う奴はな」
 大場君は怒った様にして僕に話した。
「馬鹿だよ、自分がわかってなくてな」
「それで他の人を馬鹿にする」
「その人の心をわかってなくてな」
「見ようともしないで」
「ああ、それでな」
 そのうえでというのだ。 
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