八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百十一話 紅葉が見えてその三
「大学の歌劇部は今度は椿姫をやるらしいな」
「あの歌劇を」
「そうらしいな」
「あの作品上演多いみたいだね」
八条学園ではだ。
「カルメンやラ=ボエームもそうで」
「そうみたいだな」
「うん、人気あるからだね」
「俺も好きだしな」
「そうなんだ」
「悲しいが凄く奇麗だからな」
「音楽が、かな」
「音楽もストーリーもヒロインもな」
ヴィオレッタ=ヴァレリーという、高級娼婦で田舎から出て来た青年アルフレード=ジェルモンの愛の告白を受けて交際をはじめる。
「あんな人が現実にいたら」
「いいって思うんだね」
「娼婦が何だ」
大場君はヴィオレッタの立場にも言及した。
「結核がなんだ」
「ヴィオレッタその病気で死ぬからね」
このことはラ=ボエームのミミもだ、結核で死ぬ人は昔は多かった。日本でも沖田総司もこの病気で若くして死んでいるし宮沢賢治もそうだった。
「あの時は助からなかったから」
「今はすぐに病院に連れて行ってな」
「治療してだね」
「助かる、それに娼婦なんてな」
「卑しい仕事だね」
「そう言われていてもな」
大場君は僕に怒ったみたいにして言ってきた。
「ヴィオレッタは汚いか」
「凄く心の奇麗な人だね」
「学校の先公なんかどうだ」
俗に『聖職者』と言われている。日本では宗教家よりもそう言われることが多い。
「酷い奴多いだろ」
「暴力に性犯罪にね」
「北朝鮮のシンパだったりな」
あの究極の独裁国家、人権抑圧国家の支持者は日本にもいるけれど学校の先生に特に多いから怖い。
「酷い奴が多いな」
「そうなんだよね」
「そんな連中と比べてな」
「ヴィオレッタはだね」
「どれだけ奇麗な心か」
「黄金の精神っていうけれど」
ネット用語らしいけれど凄くいい言葉だ。
「ヴィオレッタも持ってるよね」
「ああ、あのキャラクターはな」
「黄金の精神を持ってるよね」
「だから俺も好きなんだな」
ヴィオレッタがというのだ。
「そうなんだな」
「そうだろうね」
「あのヒロインはね」
椿姫はヴィオレッタが主役だ、歌う場面も多い。ヴィオレッタなくして作品が成り立たない作品だ。
「本当にね」
「あんな奇麗な心の人はいないな」
「理想だね」
「女の人のな、だからな」
「大場君はしオレッタが好きで」
「若しあんな人がいたら」
大場君は僕に熱い声で話してくれた。
「全力で支えたいな」
「あれっ、支えたいんだ」
「そうだ」
「交際したいとは」
「俺には勿体ない」
大場機運は首を横に振って僕に言った、もう僕達は茶室のところから体育館にあと少しまで行く渡り廊下に行っていた。
「あんな人はな」
「そう言うんだ」
「ああした人はもっと立派な人と一緒になって」
大場君よりもずっとというのだ。
「幸せになるべきなんだよ」
「アルフレードかな」
「あの人はまだどうもな」
「結構若いって言われてるね」
僕達より年上の設定だけれどだ、二十代前半位だろうか。
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