夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その五
「そうしてな」
「戦うんだね」
「ああ、しかし虎徹って何本もあって忠治さんも持ってた虎徹一本か?」
「どうだろうね、そこは」
「まあそこはわからないけれどな、おいらのは大きなもんだしな」
その虎徹はというのだ。
「それと術を使ってな」
「江戸城の中で戦ってもだね」
「いけるしな」
それでというのだ。
「いざとなれば乗っ取る」
「そのつもりでだね」
「江戸城に入るか」
「そして江戸城からだね」
「江戸を治めるか」
「確かにそれが手っ取り早いね、けれど荒っぽいやり方はね」
「やっぱりよくねえか」
幸田は麻友のその言葉を聞いて述べた。
「じゃあ頭を使ってか」
「少し時間がかかってもその方がよくないかい?」
「そう言われるとそうだな、じゃあどうするんでい」
「そうだね、どうしたものかね」
麻友はここで考えたがこの時にだった。
家具と食材が来た、見ればその中に酒もあった。麻友は屋敷に家具が入ると今度は自分が料理をした。そうして幸田と共にその料理を食べてこの日は寝た。
そして翌朝だ、朝飯を食いつつだった。幸田は麻友に言った。
「早速江戸城に乗り込むか?」
「今日いきなりかい」
「ああ、そうするか?」
「それは幾ら何でも無鉄砲だろ」
麻友は自分が炊いた朝御飯を幸田に出しつつ言った、おかずの味噌汁や卵焼きも彼女が作ったもので漬けものや納豆は買って来たものだ。
「江戸城のこと何もわかってないだろ」
「そう言われるとな」
「江戸の街のことすらね」
「だったらか」
「今日いきなりっていうのはね」
「止めた方がいいか」
「そうだよ、吉君本当に無鉄砲なんだから」
幸田のそうしたところも注意した。
「子供の頃から」
「江戸っ子だからな」
「江戸っ子でも無鉄砲過ぎだよ」
よく無鉄砲と言われる江戸っ子の中でもというのだ。
「坊ちゃんじゃあるまいし」
「夏目漱石さんの作品だな」
「あの人生まれは江戸だからね」
舞台は松山でもだ、夏目漱石は江戸で生まれ育った人間だったのだ。尚この作品の主人公のモデルは漱石自身ではなく赤シャツが漱石だというのが作者の言葉として残っている。
「そう思ったよ」
「てっきり寅さんか両さんかと思ったがな」
「二人共あたし達と同じ葛飾だけれどね」
「ああ、葛飾じゃこんなのだしな」
「昔ながらの江戸でね、けれどね」
それでもと言う麻友だった。
「流石にいきなり江戸城突撃はね」
「まずいか」
「そうだよ、幾ら虎徹と術があってもね」
「本丸殴り込みはか」
「無茶だよ、少しは調べないと」
そうしなければというのだ。
「駄目だよ」
「じゃあちょっと調べるか」
「江戸城のこともお城の殿様のこともね」
「それじゃあな、しかし相変わらず飯美味いな」
幸田は麻友の言葉に頷きつつ納豆をかけた白い御飯を食べつつ言った。
「焚き方いいぜ、おかずもな」
「料理には自信あるからね、それにあたしこっちの世界の職業料理人だしね」
「だから余計にかい」
「料理の腕がいいんだよ」
「吸血鬼で料理人か」
「面白いね」
「おう、そのしっくりこないところが面白いぜ」
幸田は箸を動かし威勢のいい声で言った。
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