夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その六
「それもまたよしってな」
「思うんだね」
「おうよ、それじゃあ今日はな」
「江戸の街を歩いてね」
「色々情報を集めるか」
「そうしようね、本屋さんにも入って」
そうしたこともしてというのだ。
「情報を集めようね」
「そうするか、そういえば江戸はな」
「本屋も多かったんだよ」
江戸時代の江戸の話だ、本は当時高価なもので宝として扱われていたがその本を売る店も多く貸本屋も栄えていたのだ。
「だからね」
「本屋にも入ってだな」
「情報集めようね」
「そうしような」
こう話してだ、そのうえで。
二人は朝食の後で家を出て江戸の街を歩き回った、その時にだ。
幸田がちょっと視線を店にやると街のならず者達が麻友に声をかけてきたが幸田はそのならず者達に言った。
「おい、俺の彼女だからな」
「それがどうしたんだよ」
「俺達が目をつけたんだぞ」
「彼女だからって何だ?」
それぞれ人間、コボルト、サイクロプスのならず者達だ。恰好もまさに如何にもという感じで人間とサイクロプスには刺青が袖から見えてコボルトの体毛も妙な染め方が為されている。
その彼等がだ、麻友に言い寄るのを見て咎めた幸田に言うのだった。
「そんなの関係あるか」
「邪魔な奴はどっか行け」
「さもないとやっちまうぞ」
「おい、人が言ってるのにその態度か」
「俺達を知らねえのか」
「この日本橋の町奴だぞ」
「この顔でわからねえか」
幸田に対してすごむが幸田も負けずに返した。
「おいらここに来てはじめてで知るか」
「何だ、余所者か」
「余所者なら大人しくしてろ」
「さっさと女差し出せ」
「誰が差し出すか、とにかく人の彼女に言い寄るな。さもないとな」
「何だ?やろうってのか?」
「やるなら容赦しねえぞ」
「腕の二本か三本へし折ってやるぞ」
男達はさらにすごむが、だった。
幸田は怯える様子は全く見せずにそうしてまた言い返した。
「やるならやるぞ」
「やるのか?じゃあな」
「ここでやるぜ」
「火事と喧嘩は江戸の華だしな」
こう言って襲い掛かろうとするがそれより先にだった。
幸田は動いてだ、三人をあっという間に投げ飛ばして言った。
「やったな」
「な、何だこいつ」
「滅茶苦茶強いぞ」
「洒落になってねえぞ」
「というか御前等弱過ぎだろ、その外見ははったりかよ」
「しかも光りもの抜いてねえし」
「投げただけか」
「素手でこれか」
ならず者達はこのことにも驚いていた。
「しかも殴っても蹴ってもこねえ」
「投げただけか」
「それでここまでの威力か」
「江戸の中で刀抜いたら切腹だろ」
幸田は自分達の世界のことから話した。
「法は守らねえとな」
「余裕見せるのかよ」
「何で嫌な奴だ」
「加減したってのかよ」
「だから刀抜いたら駄目だからだよ」
また言う彼だった。
「素手で勝負したが何ならまたやるかい?」
「くっ、覚えてやがれ」
「今度会った時が最後だからな」
「忘れるなよ」
ならず者達はお決まりの捨て台詞を残してだった、そのうえで。
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