夢幻水滸伝
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第八十三話 江戸っ子その一
第八十三話 江戸っ子
幸田は目を開いて目の前にある街並を見てまずはこう言った。
「夢だな」
「そうだね」
隣から声がしてきた、それは彼がよく知っている声だった。
「江戸時代にタイムスリップしたかね」
「その声は麻友っちか」
「そうだよ、吉ちゃん」
声がした方を見れば麻友がいた、しかもその恰好は江戸時代の町娘のものだ。だがただの町娘ではなかった。
肌が白く目が赤い、そしてだった。
口を開くと牙があった、それで幸田は麻友にこう言った。
「おめえ吸血鬼か?」
「あれっ、そうなってるかい?」
「ああ、目が赤くて口に牙があるぜ」
「何で吸血鬼になってるかわからないね。けれどね」
「けれど?どうしたんでい」
「そう言う吉ちゃんもあれだよ」
彼もと言うのだった。
「やたら派手な格好でお猿さんみたいな感じになってるよ」
「おいらは猿か」
「猿と人が合わさったみたいな感じだよ」
「猿か」
「ああ、そうだよ」
まさにというのだ。
「そんな感じだよ」
「そういえば街を行く人達がな」
幸田は自分達の周りを見た、見ればだ。
江戸時代の建物や道でだ、人々も江戸時代の服だが。
その人達が違っていた、人間だけでなくだ。
虎や犬、蛙等様々な生きものと人を合わせた様な外見の者達がいた。その他に多くの種族の者達がいてだ。
そしてだ、彼等が普通にやり取りをしていた。幸田はその彼等を見て言った。
「色々な奴がいる世界か」
「そうみたいだね」
「何でおいら達が一緒の夢見てるかも気になるしな」
「ちょっとここは調べてみるかい?」
「そうだな」
幸田も頷いてだ、そしてだった。
二人で街の人々に聞いてみた、そうしてこの世界のことをおおよそ理解した。それで二人で蕎麦屋に入って話した。
「とりあえずわかったな」
「こっちの世界のことはね」
「ああ、この街のこともな」
「江戸だね」
「そうだな、しかし」
首を捻りつつだ、幸田はこうも言った。
「おいら達はどうもな」
「星のモンだね」
「ああ、それで今聞こえたけれどな」
「心の中でだね」
「おいらは天の星でな」
「あたしは地の星だね」
「そのことを聞いたよ」
心の中で誰かが言ってきたのだ。
「確かにな」
「そうだね、どの星かもね」
確かにというのだった。
「聞いたよ」
「この世界を救う為に別の世界から来た」
「そんな奴だな」
「そうだね、こっちの世界でのあたし達は」
「そうなるとな」
まさにと言うのだった。
「この世界を救う為に動くか」
「そうだね」
「まずはな」
幸田は派手な上着の袖の中で腕を組んで言った。
「この江戸でい」
「江戸をだね」
「統一することでい、そして江戸から」
「日本ン統一だね」
「そしてそこから太平洋、ひいては世界だな」
こう進めていくべきだというのだ。
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