夢幻水滸伝
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第八十二話 佐渡の金その六
「うんとそこで汗をかいてだがや」
「お酒を抜くことですね」
「それがいいだがや」
「私もそうしてお酒は抜いています」
鈴子は自分もと言いつつ酒を飲んでいた。
「二日酔いになった時は」
「やっぱりそれだがや」
「棟梁もですか」
「ああ、よく二日酔いになってだがや」
こちらの世界ではというのだ。
「雅ちゃんにも言われるだがや」
「朝起きた時にですか」
「ああ、わしが寝床から出て飯を食う前に汗をかこうと思ったらじゃ」
「朝の鍛錬ですね」
「部活の朝練じゃな」
言うならそれとだ、坂口は朱を塗った杯で酒をどんどん飲みつつそのうえで鈴子にこちらの世界での朝の鍛錬について話した。
「それをするのが日課じゃが」
「そうしようと思えば」
「まずは酒を抜けと言われるだがや」
その雅にというのだ。
「さもないと身体に悪いと言われてのう」
「二日酔いで何かしようとしてもですね」
「それでまずはじゃ」
「お風呂に入って」
「酒を抜いてるだがや」
二日酔いになったその時はというのだ。
「そこはわしも同じだがや」
「左様ですか」
「かく言う雅ちゃんもだがや」
「司馬先輩もですか」
「あの娘も酒好きでだがや」
先程話した通りにというのだ。
「ワインも好きでだがや」
「司馬先輩はワイン派でしたか」
「日本では葡萄酒じゃな」
「そうですね、この世界の日本でも呼び名は」
ワインのそれはというのだ。
「葡萄酒ですね」
「それでその葡萄酒をだがや」
「司馬先輩はお好きですか」
「ギャマンの杯で飲んでいるだがや」
つまりガラスのグラスでというのだ、この世界では昔の日本の趣でもこうしたものが普通にあるのだ。
「魚介類の時は白、チーズや肉の時は赤だがや」
「本格的ですね」
「それで葡萄酒をしこたま飲んでだがや」
「二日酔いになられていますか」
「そうだがや」
実際にというのだ。
「それで朝風呂に入っているだがや」
「ううむ、司馬先輩がお酒を飲まれますと」
鈴子は坂口の話を聞いて考える顔になり述べた。
「何か妖しい色気が出そうで」
「色気だがや」
「はい、こちらの世界でもお奇麗な方なので」
人間族から見て美形と言われるダークエルフの中でも一際整った美貌を持っているが、というのだ。
「ですから」
「酒を飲むとだぎゃな」
「そこに妖しさも加わり」
そうしてというのだ。
「怖いですね」
「別に何もないだがや、普段通りだがや」
「そうですか」
「ただ。飲む量と食う量はかなりだがや」
こちらが凄いというのだ。
「そしてだがや」
「二日酔いになられますか」
「そうだがや」
実際にというのだ。
「それで風呂に入っているだがや」
「そうなのですね」
「何なら今度二人で飲んでみるだがや」
「そうしてみます、その機会があれば」
「そうするだがや、しかしあれじゃな」
「今度は何でしょうか」
「柿の種は不思議だがや」
肴になっているそれのことにも言及するのだった。
「幾らでも食えてだがや」
「お酒にも合いますね」
「異常な位にだがや」
「そう思いましたので」
その柿の種も食べながらだ、鈴子は坂口に答えた。
「今宵は出させてもらいました」
「いい考えだがや」
「それも多く」
「酒もだぎゃな」
「よく飲みましょう、そして」
「明日の朝は二日酔いになってだがや」
「お風呂に」
鈴子も応えてだ、そうしてだった。
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