夢幻水滸伝
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第八十一話 北陸の雄その五
その間飯は歩きつつ干し飯を食った、そうして天竜峡に入った時は真夜中だった。その真夜中にだった。
滝沢は自身が率いる騎馬隊これまで退いてきた彼等に対して自らも馬に乗ったまま言った。
「ではな」
「はい、これからですね」
「馬首を返し」
「そのうえで」
「攻める」
手筈通りにというのだ。
「法螺貝を全て鳴らしたうえでな」
「ここで鳴らせば」
「山にいる僧兵隊も動きます」
「峡谷に入った敵を一斉に攻められます」
「それも前後から」
「そうだ、敵は最早袋の鼠だ」
そうなっているからこそというのだ。
「しかも真夜中、ここで前後から攻めれば」
「勝てます」
「我等は劣勢ですが」
「それでも」
「そうだ、一気に攻める」
こう言ってだ、そしてだった。
滝沢は騎馬隊の馬首を反転させると共に軍勢にある全ての法螺貝を鳴らさせた、ここで彼等にとって虎の子と言っていい空船達も動き。
山にいる正宗が率いている僧兵隊も一斉に動いた、彼等は目の前の開けた場所にいる東海の軍勢今は闇夜の中に蠢く巨大な影に向かった。
その影、東海の軍勢は彼等にとっては今は獲物にしか見えなかった。だが勝利を確信している彼等が攻めの間合いに入ろうとすると。
鉄砲と術が一斉に放たれた、それを受けて騎馬隊の者達も僧兵隊の者達も吹き飛ばされた、そして空船達も。
東海の空船達に囲まれ接舷され切り込まれた、滝沢はその状況を見てすぐに言った。
「くっ、これは」
「詠まれていた」
「そうですか」
「この状況は」
「間違いない」
兵達に対して答えた。
「これは」
「そうですね」
「これはです」
「敵は読んでいました」
「そして備えをしていたのですね」
「やってくれるな、司馬さんか」
滝沢は自分達の考えを読んだのが誰かすぐに察して述べた。
「これは」
「あちらの軍師の」
「間違いない、読んでいた」
傍にいた旗本にこう言った。
「僕達の考えを」
「そうしてですね」
「攻めてきたところをな」
「逆にですね」
「迎え撃ってきたのだ」
「そういうことですね」
「これは危ない」
苦い顔でだ、滝沢は言うのだった。
「奇襲は敵の虚を衝いてこそだ」
「それがあらかじめ読まれていますと」
「何の意味もない、こうなったら」
「どうしますか、ここは」
「奇襲を見破られて終われるか」
こうも言うのだった。
「答えは一つだ」
「見破られてもですね」
「攻める」
そうするとだ、滝沢は強い声で言い切った。
「そうしてだ」
「そのうえで、ですね」
「勝つ、全軍攻撃だ」
奇襲は見破られていた、だがそれでもというのだ。
「朝まで攻める、騎馬隊も僧兵隊もな」
「では術や鉄砲もですね」
「全て使う」
使えるものは何でも使う、そうして攻めるというのだ。
「いいな」
「わかりました、それでは」
「何としても勝つぞ」
こう言ってだった、滝沢は自ら馬を駆って陣頭に立ち采配を振るった。それは正宗も同じで自ら果敢に戦った。
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