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夢幻水滸伝

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第八十一話 北陸の雄その六

 だがそれは東海の坂口と雅も同じだ、二人もまた兵達を叱咤激励しつつ自ら術や神具も使いつつ戦っていた。
「怯むなだぎゃ!陣を崩すなだがや!」
「その場から退いてはいけません!」
「このまま凌げばわし等の勝ちだがや!」
「鉄砲と術、矢を前に放ち続けなさい!」
 こう言って采配を執り続ける、二人共滝沢や正宗と直接戦わないが自分達も果敢に戦っていた。だが彼等は攻めずに。
 陣形を守らせることに専念していた、突撃には槍を向けて防ぎ鉄砲や術、矢で凌ぐ。そうして守りつつ戦っていた。
 そうしながらだ、夜の戦いを続けていたが。
 やがて朝になった、その時には両軍の状況がはっきりしていた。倒れている者達は明らかに甲信の兵達の方が多かった。
 それでだ、滝沢は忌々し気だが事実を受け入れるそうした顔になって言った。
「これはもうだ」
「認めるしかないかと」
 正宗は滝沢のところに来ていた、そうして言うのだった。
「これは」
「そうだな」
「はい、すぐにです」
「負けを認めるとな」
「あちらにお話しましょう」
「そうする、僕の力は及ばなかった」
「拙僧もです」
 肩を落としてだ、二人で話した。
「その結果です」
「そうだな、ではな」
「はい、降りましょう」
「倒れている兵達はすぐに助けよう」
「そうしましょう」
 このことも話してだ、そしてだった。
 二人はすぐに東海の本陣に白旗を掲げて向かいそこで坂口と雅と会ってそうして自分達が降ると話した。その話を受けてだ。
 雅は確かな顔でだ、こう言った。
「わかりました、では」
「これからは」
「坂口さんが拙僧達の棟梁ということで」
「甲信も治めて頂く」
「その様にお願いします」
「わかったぎゃ」
 確かな声でだ、坂口も応えた。
「おみゃあさん達はわし等の同志そしてだがや」
「はい、甲信の国と民達もですね」
「治めてくれますね」
「そうさせてもらうだがや」
 笑顔でだ、二人は応えた。
「宜しく頼むだがや」
「はい、それでは」
「これより」
「一緒にやっていくだがや」
「あの、先程まで戦をしていましたが」
「もう一緒にですか」
「戦は終わっただがや」
 だからだとだ、坂口は自分の態度にいささか驚いている二人に対して明るく笑って話した。
「だからだがや」
「いいですか」
「そうなのですか」
「そうだがや、では倒れた兵達を助けるだがや」
「はい、我が軍の兵達を」
 雅は坂口の今の言葉に笑顔で応えた。
「助けましょう」
「そうするだがや」
「では我等も」
「これより」
「頼むだがや」
 坂口も応えてだ、そしてだった。
 四人の星の者達は共に傷つき今は命を落としている兵達を助けそれが終わると宴に入った、そうしてだった。
 酒も飲んで親睦を深めもした、坂口はその中で滝沢と正宗に話した。
「甲信の政もどんどんしていくだがや」
「そしてですね」
「そのうえで」
「豊かにしていくだがや」
 このことを約束するのだった。 
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