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夢幻水滸伝

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第八十話 東海と甲信その一

               第八十話  東海と甲信
 滝沢と正宗はそれぞれの国を統一した棟梁として甲斐と信濃の国境で激しい一騎打ちを演じた、小柄ながら素早さを活かして二刀流で闘う滝沢に正宗は大柄な身体とその怪力を使って岩融を使って闘う。
 だが三刻も続いた一騎打ちの果てにだ。
 正宗は右膝を着いた、それで言った。
「拙僧の負けです」
「そのことを認めるのか」
「今片膝を着きました」
 だからだというのだ。
「これが何よりの証です」
「負けたという」
「はい、拙僧は敗れましたので」
 それでともだ、正宗は滝沢に話した。
「これからはです」
「僕と一緒にか」
「いえ、貴方の家臣となり」
 そしてというのだ。
「忠義を尽くします」
「そう言うと何か」
「主従ですね」
「そう思えるな」
「はい、実際にです」
 その通りだとだ、正宗は滝沢に答えた。
「そうなることを申し出ています」
「それじゃあ」
「はい、これよりは貴方が主で」
「君が家臣として」
「共に治めていき」
 それぞれの国、甲斐と信濃をというのだ。
「そのうえで」
「これからどうするのかも」
「決めましょう」
「ではこれより」
「はい、主従になりましょう」
 正宗は右膝だけでなく左膝も着いた、そのうえで自分に勝った滝沢に頭を垂れた。土下座はしていないがそれが家臣となった証だった。
 この時から滝沢と正宗は常に共にいる様になった、滝沢は甲信の主となり拠点を甲斐の甲府城に置いた。
 そこで二国の政を執りつつだ、正宗に言った。
「甲信は厄介な場所にあるな」
「北に北陸、東に東国とですね」
「南に東海がいる」
「敵に囲まれていますね」
「しかも国がまだ貧しい」
「政が必要ですね」
「まずこの甲斐を」 
 自分達の拠点があるこの国をというのだ。
「治水を定め」
「そうしてですね」
「川の氾濫を防ぎ水を国中に充分に及ぶ様にして」
 その様にしてというのだ。
「水田を増やしていこう」
「我々の世界よりは豊かですが」
 この世界の甲斐はとだ、正宗はこう述べもした。
「ですが他の国に比べますと」
「どうしても貧しいな」
「山に囲まれ今は水田が少なく」
「だからここは」
「治水を定めてですね」
「そのうえで水田を増やして」 
 そしてというのだ。
「民がより多くの米を食べられる様にしよう」
「そうすることですね」
「そして水田だけでなく」
 さらに言う滝沢だった。
「葡萄もどんどん植えていき他の作物も」
「作っていきますか」
「山でも出来そうなものを」
 甲斐を囲む山々からも言うのだった。
「そうしていこう」
「何時までもほうとうだけ食べていては」
「よくはない」
「その通りです、これは信濃にも言えますね」
 正宗はその大柄な身体で述べた。
「全く以て」
「あの国も山に囲まれている」
 甲斐と同じく自分達が治めているこの国もとだ、滝沢は述べた。 
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