八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百話 森鴎外という人その十
「フランス軍の元帥もそれで治療していたよ」
「梅毒をですか」
「ガムラン元帥、二次大戦中の陸軍の重鎮だったけれど」
「その人も梅毒になって」
「そうした治療をしたけれど」
水銀を使ったそれをだ。
「中毒症で思考力がかなり落ちていたらしいね」
「そこで戦争をですか」
「指揮をしたけれど」
「フランス最初ドイツ軍に負けましたね」
「そうなった一因とも言われているよ」
ガムラン元帥の思考力がかなり落ちてだ。
「まあ最初からね」
「梅毒にはならないことですね」
「そうだよ、君も気をつけるんだよ」
先生は僕に笑って言ってきた。
「脚気もね」
「いや、梅毒なんて」
先生の今の言葉にはだ、僕は慌てて言い返した。
「僕ならないですよ」
「ああ、そうしたことはなんだ」
「そんな経験ないですから」
このことは強く言った。
「今まで」
「これからだよ」
「これからですか」
「君のお父さんみたいに遊ぶんだったらね」
「あの親父は特別です」
下半身に人格がないとは言わない、人妻さんや彼氏持ちはすぐに見抜いて絶対に手を出さないからだ。節操はある。
けれどだ、滅茶苦茶な遊びぶりは事実だからだ。
「遊び方は」
「有名人だからね」
「有名過ぎますよ」
息子である僕にしてみればだ。
「今も相変わらずらしいですから」
「イタリアでもだね」
「欧州中を飛び回って」
仕事をしつつだ。
「もう酒池肉林らしいです」
「ワインの池に生ハムや羊肉だけじゃないね」
「美人さん達とも」
こちらの酒池肉林もだ、親父の場合は。
「遊んでいるそうですから」
「あの遊び方は尊敬出来るよ」
「出来ます?」
「人間ちょっとお金を出せば酒池肉林は出来るよ」
「文字通りのですね」
「お酒とご馳走はね」
こちらの文字通りの酒池肉林はだ。
「出来るよ、ただね」
「ただですか」
「もう一つの酒池肉林はね」
「そうそうですか」
「お金があって出来ても」
こちらはというのだ。
「体力が続かないんだよ」
「そうなんですか」
「女の人達と遊ぶことはね」
「体力がないとですか」
「出来ないよ」
そうしたものだというのだ。
「お酒もね」
「遊ぶことはですか」
「どちらもですね」
それこそというのだ。
「しないとね」
「出来ないものですか」
「それは大人になったらわかるよ」
その時にというのだ。
「四十を過ぎたらね」
「親父四十過ぎてますよ」
若作りしているけれど結構な歳だ、親父が言うには華の四十代人生はまだまだこれからということだけれど。
「それでもああして」
「そう、四十過ぎたらわかるよ」
「ああした風に遊ぶにはですか」
「体力が続かないんだよ」
そうだというのだ。
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