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永遠の謎

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645部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその二十二


第三十六話 大きな薪を積み上げその二十二

「自分の為に君達を傷つけたくないのだ」
「そんな、我等は陛下の臣民です」
「それでどうして陛下の為に動かないのか」
「そんなことは御気になさらずともいいのに」
「それでどうして」
「陛下は今まで傷ついてこられた」
 様々なことでだ。そうなってきたというのだ。
 王はあまりにも繊細であるが故に誰よりも傷つくことが多かった。そのせいでだった。
「だからだ。他の者も傷つけたくはないのだ」
「しかし今はそんなことを言っては」
「陛下は王でなくなるのです」
「それで何故その様なことを」
「今仰るのですか」
「最早。この世には未練はないらしい」
 それでだというのだ。
「あの方はもう」
「・・・・・・ではもう」
「あの方はこのまま」
「退位されるのですか」
「我々にできることはもうない」
 デュルクハイムもだ。このことを認めるしかなかった。
 それでだ。臣民達にこう話すのだった。
「君達もだ。解散しろとのことだ」
「そんな、陛下はもう」
「どうしようもないのですか」
「今まで御苦労だった」
 労いの言葉は同時に別れの言葉でもあった。
「君達の忠義は歴史に残る。忠臣達としてな」
「しかしそれでは」
「陛下は」
「いいのだ。最早全ては終わったのだから」
 それでだというのだ。
「いいな。解散するのだ」
「・・・・・・わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等も渋々だが解散しようとする。だがここでだ。
 デュルクハイムのところにだ。彼が来た。その彼は。
 ホルニヒだった。彼は意を決した顔でだ。デュルクハイムの前に出て来たのだ。
 その彼を見てだ。デュルクハイムは驚いた顔になり彼に言った。
「君は。しかし」
「役職なぞ関係はありません」
 解任された。そのことの話だった。
「それ以上にです」
「陛下を御救いしたいのか」
「その為に来ました」
 こうだ。全てを投げ捨てている顔でデュルクハイムに答えるのである。
「今ここに」
「私の話は聞いた筈だ」
 ホルニヒの決意も見てだ。それでもデュルクハイムは彼に告げた。
「陛下はもう」
「いえ、それでもです」
「陛下を御救いしたいというのか」
「はい、必ず」
 こう言うのであった。
「そうします。絶対に」
「止めても無駄か」
 デュルクハイムもだ。ホルヒニのその顔を見てだ。
 認めるしかなかった。そうしてだった。ホルニヒに告げた。
「馬がある。すぐに行くことだ」
「有り難うございます。それでは」
 ホルニヒが行こうとするとだ。民衆や兵士達もだ。
 再びだ。声をあげるのだった。
 
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