憑依先が朱菜ちゃんだった件
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第14話
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回は2週間の空きで更新できました!まぁ、本当なら昨日の内に更新したかったんですが………。
今回は豚頭魔王の誕生と豚頭魔王との戦闘(前編)といった所です。
【視点:朱菜】
嵐牙狼族より少し上程度の魔素の持ち主が、ドラゴ○ボールの世界ならギューンという擬音が付いていそうな飛行音と共に現れたかと思えば、自称:上位魔人のゲルミュッドですか。
「貴様ら!!上位魔人であるこのゲルミュッド様の計画の邪魔をするとは、一体どういうつもりだ!!?」
ゲルミュッドは豚頭帝とお父様達の間に降り立ったかと思えば、お父様達に向かって杖を向け、怒鳴り始めた。
この小物、本当に自称:上位魔人ですね。ぶっちゃけ、魔素量だけなら帝鬼のお父様は災禍級相当。お兄様や白老達――修羅、羅刹、忍鬼でも厄災級相当の魔素量があるのに、それが分からないのでしょうか?
というか、他の妖鬼でもゲルミュッドの倍以上の魔素を持っています。煉獄業火と黒炎獄の連発で魔素を消費していたとしても、魔素量にはかなりの差があります。
感知タイプの魔人でなかったとしても、上位魔人であるなら災禍級相当の魔素量を感知出来ないのはおかし過ぎます。
ちなみにリムル様の魔素量は上位神仙に進化した時点で災禍級相当。私の魔素量は天災級相当です。
「豚頭帝、貴様もだ!貴様が鈍間なせいで俺様が出向くことになったのだ。何故さっさと魔王種へと進化せんのだ!?」
「……魔王種に進化?」
この小物、豚頭帝――というか、名付けを行った魔物全員に計画の内容とか話してないですよね。だって、絶対に数撃てば当たる戦法で名付けをしてたでしょうし、見込みのない奴は見込みのある奴の糧にしようとを思っていたでしょうし。
「ちっ!この鈍間の愚図が!!……もういい。貴様は何も考えず俺の指示通りに動け。取り敢えず、この場に居る者を全員喰え」
………この小物、馬鹿ですか?思考能力の低下してる豚頭帝にそんなことを言ったら自分も喰われ兼ねないのに。だって、|この場に居る全員って自分も含まれてますよね。
思考能力の低下している者に命令を出すなら、自分を除くこの場に居る敵全員と言わないと意味が無いと思います。……あっ。
「手始めに向こうの蜥蜴共を―――」
「オレ…、ゲルミュッド様の……、命に、従う」
「え?」
あー。私の予想通り、小物が真っ先に食べられました。しかも、生きたまま頭から丸かじり。マミられてます。私の記憶では豚頭帝に喰われる前にお兄様達がリンチしていたと思うんですが、記憶違いでしょうか?
「ゲ、ゲルミュッド様……」
「間抜けな男だ。どう見ても意識が混濁してそうな豚頭帝に、自分も喰われ兼ねない命令をするとは……」
「が、牙狼族の長殿!ゲルミュッド様を愚弄する様な物言いは―――」
「蜥蜴人族、貴様はあの間抜け以上の愚か者だ。あの間抜けは貴様とその仲間を真っ先に豚頭帝の餌にしようとしていたのだぞ」
手始めに~とか言われていたのに、この駄蜥蜴は難聴系ハーレム男なんでしょうか?あっ、ハーレム男じゃありませんね。ただの難聴系脇役でした。
と、そうこうしてる間に豚頭帝が小物を食べ終えたみたいですね。豚頭帝から溢れ出た漆黒の魔素がその体を包んでます。これは―――
(個体名:ゲルドの豚頭帝から魔王種への存在進化を開始します)
今のが「世界の言葉」ですか。私があの声を聞いたのはこの世界に生を受ける直前なので、17年振りに聞いたことになります。というか、魔王種に進化しきっていない今を狙えば豚頭帝を倒せそうですよね。
私達は特撮番組でヒーローの変身やヒーローロボットの合体を待ってあげる親切な怪人や怪獣ではないので、進化し切る前に倒すのもありだと思うんです。故に仙法風遁・螺旋手裏剣でも―――あっ。
「「「「「「「「「「「「「「「鬼王の妖炎!!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「黒炎獄!!」」」」」」」」」」」」」」」
「「煉獄業火!!」」
「『黒雷』!!」
お父様が思念伝達で指示を出したのでしょうか?私が螺旋手裏剣を使うより早くリグルさん達大鬼族部隊が鬼王の妖炎を、妖鬼部隊が黒炎獄を、お父様とお兄様が煉獄業火を、ランガが『黒雷』を使いました。
これは完全にオーバーキル―――……ここで更に白老の斬仙剣による飛ぶ音速斬撃ですか。しかも、紫呉と紫苑が影移動でこの場に現れた蒼月と蒼影と合わせる様に起爆札を付けた苦無を投げ始めました。
これをオーバーキルと言わずして何と言えばいいでしょう?まるで聞仲に総攻撃を仕掛ける崑崙十二仙です。起爆札の爆発の余波で周囲の豚頭族などが軽く吹き飛ばされてますよ。
流石にここまでの過剰攻撃をされたら進化中の豚頭帝は死んでもおかしく―――
(―――確認しました。豚頭魔王は『炎熱攻撃耐性』を獲得、………成功しました。続けて『電流耐性』を獲得、………成功しました。付属して『麻痺耐性』を獲得、……成功しました。続けて『斬撃耐性』を獲得、………成功しました。続けて『爆撃耐性』を獲得、………成功しました)
………ないわー。超ないわー。進化途中の豚頭帝を狙った結果、耐性強化された豚頭魔王が生まれるとか本当にないわー。
数少ない救いは私が螺旋手裏剣を放たなかったことでしょうか?放ってたら『風攻撃耐性』も付いていた可能性がありますよね。
……豚頭帝を覆っている魔素の繭(?)から腐食の妖気が出始めました。そろそろ豚頭魔王の誕生ですね。
取り敢えず、腐食の妖気で被害が拡大しない様、影分身を使った四紫炎陣で魔素の繭(?)を囲んでおきましょう。私が4体の影分身で魔素の繭を囲み、四紫炎陣の結界を張ると腐食の妖気が結界内に充満し―――
(―――確認しました。豚頭魔王は『腐食耐性』を獲得、………成功しました。………個体名:ゲルドは豚頭魔王への存在進化を完了しました)
ああっ!更に耐性を与える結果に!!魔素の繭(?)から生まれた豚頭魔王は結界に触れます。普通なら触れた時点で結界に身体を燃やされるんですが、『炎熱攻撃耐性』のお陰で体が燃えることがありません。
そして、指先が結界を突き破ると、エ○ァが使徒のA・Tフィールドを侵食する様に結界を左右に引き裂こうとします。けれど、四紫炎陣でこれだけ時間を稼げるなら四赤陽陣なら破られることなく閉じ込めることも可能かも?
まぁ、それでまた面倒な技能を獲得されても嫌なので閉じ込めませんが。結界破壊系の技能などを獲得されたら洒落になりませんから。
私はリムル様と共に地上へと降り立ち、天騒翼を消すと同時に影分身を解き、豚頭魔王を隔離していた四紫炎陣を消します。すると―――
「ふむ。無駄な抵抗は止めたか。賢明な判断だ」
意識が混濁していた豚頭帝の時とは異なり、豚頭魔王は意識をはっきりとさせた状態で話し掛けてきた。
「我が名はゲルド。豚頭魔王ゲルドである。そこの3名、名を名乗るがいい」
豚頭魔王はリムル様と私、お父様に名を名乗れと言ってきました。………この豚、何様のつもりなんでしょう?
「リムル=テンペストだ」
「大筒木紅麗」
「………………大筒木朱菜です」
「リムル=テンペスト、大筒木紅麗、大筒木朱菜。貴様らの魔素量は俺に匹敵している。俺の軍門に降るのであれば貴様らに連なる者も生かそう。
そうだな。リムル=テンペストと大筒木紅麗は側近に、大筒木朱菜は俺の妻として迎え入れてやろう。我が手を取り、蜥蜴人族を、樹人族を、牛頭族を、馬頭族を、耳長族を喰らって、このジュラの大森林を――――何をする、大筒木朱菜?」
長々と演説を続ける豚頭魔王が不愉快極まりないことを口にしたので、私が雷の性質変化で貫通力を上げた苦無を投げ付けると、豚頭魔王は片手でそれを防ぎました。
そういえば、この豚頭魔王は『電流耐性』を獲得していましたね。けれど、『電流無効』ではないので1.5cm位は苦無が刺さりました。
「あなた程度に私の伴侶となる資格があるとでも?そもそも私がお慕いしているのはリムル様ただ1人。他の者の妻になる位なら自害した方がマシです」
「心に決めた者がいるか。ならばその者を降し、力づくで言うことを聞かせるのも一興」
「あなた程度、リムル様が出るまでもありません。私が滅します」
私は豚頭魔王にそう告げると同時に輪廻転生写輪眼を発動させ、尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)となります。
「何だ、その魔素量―――」
「反応が遅いです」
尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)になったことで増加した私の魔素量(正確にはチャクラ量)に驚く豚頭魔王に対して、私は一瞬の内に豚頭魔王の懐へと入り、その顎へと掌底アッパーを放ちます。
本来なら蹴り上げる所なんですが、体格差から打ち上げるのに掌底アッパーが一番遣り易い方法でした。そして、尾獣チャクラモードで可能となった高速ならぬ光速移動で豚頭魔王の打ち上げられた先へと移動。
空中で身動きを取れないその体―――鳩尾へ桜花衝と超加重岩の術で攻撃力を高めた一撃を放ちます。
「――――ッぁ!!」
声にもならぬ声を上げる豚頭魔王。当然、私の一撃を受けた豚頭魔王は吹っ飛びます。……あっ。一撃加えた時、ついでに飛雷神の術のマーキングを付けて置きました。
念の為言っておきますが、豚頭魔王が吹っ飛んだ先に私はまた回り込み、今度は背中目掛けて桜花衝+超加重岩の術の一撃&飛雷神の術のマーキング。
元々、相手をピンボールみたいに殴り飛ばし続ける高速体術なんですが、飛雷神の術と組み合わせたら、先回りが楽になりますよね。新しい術名を付けるとしたら、裏蓮華・散華といった所でしょうか?
【視点:紅丸】
「なぁ、親父」
「何だ、紅丸?」
「あれは桜花衝と超加重岩の術を併用した裏蓮華だよな?」
「ああ。……いや、若干だが朝孔雀が混ざりはじめているぞ」
「うわっ!紅麗さんの言う通りッスね。一撃の様に見えて、3~4撃入れてるッスよ。豚頭魔王が殴り飛ばされる毎に摩擦の炎が3~4つ発生してるッス」
「………容赦ないですね」
「豚頭魔王の発言が相当許せなかったのでしょう。飛雷神の術も併用し、移動の手間を省いておられる」
空中で弾き飛ばされ続けている豚頭魔王を見ながら、俺と親父、リグル殿、ゴブタ、白老は朱菜の容赦のなさに軽く引いている。
紫呉と蒼月、紫苑、蒼影、妖鬼達も血の気が引いていて、大鬼族や蜥蜴人族、子鬼族達もドン引きだ。
豚頭族の軍勢に至っては戦意を喪失したのか、顔面蒼白で武器を手放している者もいる。
「そういえば、朱菜的に許せなかった豚頭魔王の発言って何だったんだ?やっぱり、リムル様を愚弄した発言か?」
「豚頭魔王の発言全てが許せないものではあっただろうが、恐らく引き金となったのは自分の愛するリムル様を降し、自分を力づくで嫁にする発言だろう」
「成程ッス。リムル様、超愛されてるッスね」
「……朱菜様ならリムル様の伴侶となられても誰も文句は無いと思いますよ」
「リムル様。朱菜様のこと、宜しく頼みましたぞ」
「………この光景を見せられた後にそんなことを言われても素直に喜べないんだが?夫婦喧嘩で俺が勝てる未来が見えない以前に尻に敷かれる光景しか見えない。お前ら、主君が嫁の尻に敷かれる様な奴で納得できるか?」
「嫁どころか娘の尻に敷かれる者が鬼一族の族長をしておりますが、それが何か?」
「…………」
親父の一言にリムル様は何も言い返せなくなっていた。本来なら上に立つ者として情けないという所だが、相手が朱菜では何も言えない。
というか、俺も尻に敷かれてる立場だ。飯を食う所作が上品じゃないとか、部屋を散らかしっぱなしとか。お前は俺の母親か、と問いたくなる。
あっ。長い晒へと変化させた如意羽衣で豚頭魔王を拘束し、最後の一撃の為に引き寄せた。これで決着だな。
(―――確認しました。豚頭魔王は『打撃無効』を獲得、………成功しました。続けて『痛覚無効』を獲得、………成功しました)
ここで更に無効系技能の獲得だと!?朱菜も驚きで目を見開き、豚頭魔王を拘束していた如意羽衣を元に戻すと、飛雷神の術を使って俺達の所に戻って来た。
あれ?いつの間に俺達のいる所にマーキングしたん―――あっ、マーキングの施された苦無が地面に刺さってる。何かがあった時に離脱できる様、苦無を地面に刺してたんだな。
「……あのまま最後の一撃を放っていたら、受け止められていたかもしれません」
「その可能性は高そうだな。多分だけど、スライムを捕食したことがありそうだ。体の傷が少しずつではあるが回復している。固有技能の『自己再生』を獲得していると考えるのが妥当。
『打撃無効』と『痛覚無効』、『自己再生』を併用すれば朱菜の一撃も受け止められるだろう。そして、受け止めたら最後だ」
「自分より魔素量が上と分かった以上、嫁とは言わず捕食して私の技能の獲得を狙う。もしくは更なる存在進化を狙う、ですか?暴食にも程があります」
朱菜は少しだけ悪態を吐きながら、両手に立方体のチャクラを形成しようとする。が、それは蒼月によって止められた。
「朱菜様、それを使うのはお止め下さい」
「何故です、蒼月!これを使えば、耐性系技能や無効系技能を獲得するより早く――――」
「この戦、豚頭族を通して何者かに覗き見られている可能性があります。先程までの状態もそうですが、これ以上覗き見している者にこちらの情報を流すのは良くありません」
豚頭族を通して俺達を覗き見ている者がいるだと?黒幕はゲルミュッドだけじゃないのか!?
「………なら、どうするのです?一撃で殺しきらなければ耐性系技能を獲得される可能性がある。炎も雷も効かない。斬撃と打撃も効かない。
風や土、水で攻撃しても耐性を獲得される可能性がある。砂を使った圧殺も死ぬより早く『圧力耐性』を獲得されるかもしれない。確実に仕留められるのは塵遁か尾獣―――」
「そこまでだ。蒼月の言う通り、この一件の黒幕が覗き見ているならこれ以上情報を渡す様な発言は控えろ」
「ですがリムル様―――」
「朱菜は何でも自分一人で解決しようとし過ぎだ。ちょっとは周りを頼れ」
リムル様はそう言い終えると、豚頭族に向かって歩を進め始めた。
「時間を掛けた攻撃で耐性を獲得されるなら短期決戦だ。同じ捕食系技能持ち同士、捕食で勝負を決しようじゃないか」
後書き
という訳で14話でした!少しだけ原作と異なる仕様にしてみたのですが如何だったでしょうか?
・ゲルミュッド即退場
・豚頭魔王の技能強化
・理知的(?)な豚頭魔王
主な変更点はこの3つですね。というか、朱菜VS豚頭魔王を見ているクレイマンはぶっちゃけどんな心境なんでしょう?
(皆さんのご意見を感想のコメントで頂けると幸いです)
次話更新は年末年始が仕事で忙しいので早くても年明け2~3週間後以降になると思います。
(私のモチベーション次第で大晦日か元旦に更新される可能性もあり)
そんな訳で次話も楽しみにしていて下さい。(笑)
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