憑依先が朱菜ちゃんだった件
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第15話
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回も約2週間の空きで更新することができました!
今回は豚頭魔王との戦闘(後編)です。
意外としょぼい内容かもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです。
【視点:リムル】
「時間を掛けた攻撃で耐性を獲得されるなら短期決戦だ。同じ捕食系技能持ち同士、捕食で勝負を決しようじゃないか」
攻撃すればする程に耐性を獲得していく豚頭魔王との戦いでは、いくら尾獣チャクラモードの朱菜でも殺しきる手段は限られてくる。
耐性系技能を凌駕する攻撃を与えた結果、無効系技能を獲得される危険性もある。恐らく、尾獣チャクラモードの朱菜が確実に豚頭魔王を仕留められる手段は塵遁か、須佐能乎の十拳剣、尾獣玉くらいだろう。
六道仙人モードなら求道玉や共殺の灰骨で仕留めることもできるだろう。だが、蒼月の報告では何者かがこの戦いを覗き見ている。
ゲルミュッドが十大魔王の誰かの手先なら、覗き見ているのは高確率で魔王の誰か。もしくは魔王の幹部と考えるべきだろう。
ならば、うちの最大戦力である朱菜の力は極力晒さない方がいい。晒した結果、複数の魔王が手を組んで襲ってきたりしたら厄介だしな。
あっ!どうして俺が六道仙人モードのことを知っているのかというと、月読の幻術空間で見せて貰ったことがあるからだ。紅麗や穂乃花、紅丸達も知ってるぞ。
さて、豚頭魔王に無効系技能を獲得させること無くどうやって仕留めるかだが、前言通り捕食勝負を仕掛ける。
一応言って置くけど、考え無しに捕食勝負をする訳じゃないぞ。朱菜と蒼月が言い合い(?)をしてる間に『大賢者』に豚頭魔王が『捕食者』への耐性を獲得できるか聞いてみたんだよ。
結果、捕食系技能は物理攻撃系の耐性技能や無効技能で防ぐことはできず、また捕食系技能を防ぐ手段は被捕食側の魔素量が捕食側の魔素量より上でなければ不可能ということだ。
豚頭魔王の魔素量は俺の2分の1以下なので捕食できるらしい。ちなみに、現時点での俺の4倍以上の魔素量があるヴェルドラに『捕食者』を使えたのは本人が抵抗しなかったかららしい。
そう。今の俺なら豚頭魔王に『捕食者』を防がれる心配が無い。だが、相手も下位互換とは言え捕食系技能である『飢餓者』を持っている。
互いに捕食し合うとなると、互いの魔素と技能の奪い合いになるからな。豚頭魔王の魔素が増えて、捕食効率が下がる可能性があるので、その点を『大賢者』は心配していた。
けど、俺には特殊技能『妖怪仙人』の肉体超速再生がある。再生速度でなら自己再生より上。更にスライム形態なら全身が胃袋そのもの。
豚頭魔王みたいに口から摂取し、食道を通して胃袋に獲物を入れる必要はない。捕食速度も俺の方が上だ。これだけでも勝てる確率はかなり高い。
だが、このままでは低確率でも負ける可能性がある。確実に勝つ為には別の技能を使う必要がある。それは―――
「それじゃあ、殆どワンサイドゲームだろうけど行かせてもらう。………木遁・黙殺縛りの術!」
「!!」
俺は印を組んでから左手を豚頭魔王に向かって突き出し、紐状の樹枝を形成して豚頭魔王を拘束した、更に―――
「続けて木遁・木龍の術!!」
朱菜を拘束したこともある木龍を絡ませ、更に豚頭魔王を拘束。木龍の術は敵の拘束だけでなく、拘束した者のチャクラや魔素を吸い取る性質がある。
これで魔素を用いた放出系の技――豚頭将軍の使っていた混沌喰などは使えなくなるだろう。あとは一方的に食らうだけだ。俺はスライム形態となり、木龍の様に豚頭魔王へと絡みつく。
「貴様、スライムだったのか!?何をするつもりだ!!?」
「喰うのがお前の専売特許とでも思っていたのか?俺はお前より上位の捕食者だ」
(――告。敵個体、特殊技能『飢餓者』を使用。体の一部を捕食されました。肉体超速再生にて捕食部分を再生。
敵個体、『自己再生』により被捕食部を回復。こちらが先に捕食できる確率は―――)
【視点:朱菜】
流石はリムル様です!まさか捕食勝負をする前に黙殺縛りと木龍の木遁拘束コンボで豚頭魔王の動きを封じるとは思いもしませんでした。
木遁で作り出された木製品はチャクラでコーティングすれば鉄製品以上の耐久度を得られますから。しかも、木龍には拘束した者のチャクラや魔素を吸い取る性質があります。
木龍に絡みつかれた状態では、豚頭魔王も腐食の妖気や混沌喰を使えなくなるでしょう。
豚頭魔王の今の状況を端的に述べるなら、某狩人漫画で登場した鎖使いに拘束されて能力を使えなくなった怪力自慢の盗賊団員といった所でしょう。
拘束されて『飢餓者』の腐食効果も封じられた以上、豚頭魔王の捕食手段は直接口から捕食対象を取り込むしかありません。
対するリムル様はスライム形態となれば全身が捕食器官。捕食速度はリムル様が上。更に再生能力も豚頭魔王の『自己再生』よりも『妖怪仙人』の肉体超速再生が上。
攻めと守りの両方でリムル様が圧倒している以上、豚頭魔王がリムル様に勝てる要素が皆無。もし、これでリムル様が負けるとしたら、完全に外部からの干渉によるものです。
物理的な意味でリムル様に『捕食者』を使えない様にするとしたら、肉体超速再生を上回る速度と『物理攻撃耐性』を突破できる破壊力でリムル様を攻撃し続ける必要があります。
そんな物理攻撃が可能な存在は某奇妙な冒険に登場するスピードパワー型の幽波紋―――星之白金・世界位しか考えられません。あの幽波紋、パンチ速度が光速みたいですし。
魔法や忍術、仙術、『妖術』。あと、技能に該当する攻撃手段なら『物理攻撃耐性』を無視してダメージを与えられると思いますが、それでも肉体超速再生を上回る速度で攻撃し続けなければ、『捕食者』の妨害はできないでしょう。
肉体超速再生も『物理攻撃耐性』も意味を為さない必殺、もしくは必封できる術や技能と相対した場合、流石のリムル様でも負けることになるとは思いますが……。
少なくともこの場に居る敵―――豚頭族軍に光速連撃や必殺、必封技能を持つ者がいるとは思えないので、その点は安心していいでしょう。
けれど、窮鼠猫を噛むという諺もあります。外部からのショボイ干渉に意識を向けた結果、豚頭魔王が少しでも盛り返したとしたら?
その盛り返したことで得られた時間で『自己再生』を進化させられたとしたら?もしくは『飢餓者』を進化させられたとしたら?
超極少確率ですが、あり得ないと言いきれない以上、ほんの僅かなことでもリムル様への干渉を許す訳にはいきません。
そんな訳で私は尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)のまま特別技能『神仙覇気』を使い、豚頭族を委縮させます。
『神仙覇気』は覇気系技能の中では『大魔王覇気』と同格なんですが、余波で蜥蜴人族の連れて来た子鬼族達がショック死されても困るので『英雄覇気』以上『魔王覇気』以下のレベルに抑えています。
そのせいなのか、豚頭族の中でも500人位は動けそうな者がいます。まぁ、その程度ならお父様達で対処できるでしょうから、許容範囲内でしょう。
【視点:豚頭魔王の腹心】
我等が父王――魔王ゲルド様と敵将――リムル殿が互いを捕食し始めて一体どれだけの時間が経っただろう?実際はほんの僅かな時間しか経っていないのだろうが、両者の行く末を見届けるしかできぬ我らにはとても長い時間が経っている様に感じた。
木製の枷と龍に拘束された父王はリムル殿に身体を捕食されながらも『自己再生』の技能で体を癒し、特殊技能『飢餓者』で捕食し返しているが、捕食と再生の速度が圧倒的に劣っている様で一方的な流れとなっている。
恐らく、オレだけでなくこの場に居る全ての豚頭族が父王の加勢に入りたいと思っていることだろう。だが、その様な行動を取ることは許されない。
何故ならば、俺達の前には敵将と同等の存在である武人―――大筒木紅麗という名有りの魔人と敵将をも凌駕し父王を物理的に仕留めかけた女傑―――大筒木朱菜という魔王にも匹敵する名有りの魔人がいるからだ。
特に大筒木朱菜という魔人は我らのことを威圧している。我等が動けば彼等も動き、我等の同胞を一方的に蹂躙するつもりなのだろう。ここまで進軍した15万の同胞の中には老人から赤子に至る非戦闘員も含まれている。
同胞が全滅しかねない未来への恐怖か、それとも非戦闘員を巻き込む訳にはいかないという僅かばかりに残っている理性によるものか。兎も角、我等は誰一人として動けずにいた。
そして、ついに父王の命は最後の時を迎える。その体は骨に食べ残しの様な肉が幾ばくか付いている所まで喰らい尽くされ、父王はその場に倒れ込んだ。そして―――
「魔王ゲルド、お前の全ては俺が喰らう。後は俺に任せて安らかに眠れ」
リムル殿がそう告げると同時に父王は動かなくなり、その体はリムル殿に喰らい尽くされた。その瞬間、オレには骨しか残されていなかった父王の顔に安らぎの笑みが浮かんでいた様に見えた。
「……父王よ。漸く重責から解放されたのですね……」
父王の重責を知っていながら、それを共に背負うことすらできなかったオレは、父王が亡くなったことによる同胞の嘆きの声とリムル殿の勢力の歓声を耳にしながら父王の冥福を祈った。
その後、我ら豚頭族とリムル殿の勢力の間にジュラの森の管理者である樹妖精が現れ、翌朝に此度の一件を収束する為の話し合いを行うと宣言し、各種族は数名の代表者と共に一族の意見を纏め、参加する様言ってきた。
敗北した我ら豚頭族には不参加という選択肢はない。また、多くの他種族を喰らった我らが無罪放免となることもないだろう。
行ったことが詫びて許されることではないと承知しているが、同胞を根絶やしにされる様な話になった場合、虫のいい話ではあるが父王の腹心であったオレの首1つで容赦して貰える様嘆願してみよう。
後書き
という訳で15話でした!ほんの少しだけ原作にアレンジを加えてみたのですが如何だったでしょうか?
本当なら1/3に投稿する予定だったのですが、投稿機能などに問題が発生していた為、投稿できずにいました。
ちなみに本文内で豚頭魔王の動きを封じる手段として仙法・明神門を使うというのもあったのですが、それはミリムの説教案として温存しておくことになりました。(笑)
次話は戦後処理の話になります。次話も割と早く投稿できると思うので楽しみにして頂けると幸いです。
ページ上へ戻る