夢幻水滸伝
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第七十七話 筑後騒乱その六
「軍港があります」
「肥前は水軍もいいでごわすが」
「はい、それが天草や島原を守っていますが」
「その水軍もごわすな」
「手に入ります」
佐世保を手に入れると、というのだ。
「水軍が逃げても軍港が」
「その通りでごわすな」
「ではですね」
「柳川での戦に勝ち」
そしてというのだ。
「それからでごわす」
「久留米城と佐賀城を狙う」
「そうするでごわす」
「その二つの城と城下町を手に入れ」
「それぞれの国に攻め入るでごわす」
「それでは」
「これよりさらに北上するでごわす」
是非にと言ってだ、そしてだった。
北原は又吉と純奈の三人で薩摩もっと言えば九州南部の兵を率いてそうして柳川に向かった。その南岸でだった。
美鈴そして純奈が率いる福岡と肥前の連合軍と対峙した、北原はその陣容を見て又吉と純奈に言った。
「ではでごわす」
「これからですね」
「川を渡ってですね」
「攻める」
「そうしますね」
「そうするでごわすが」
しかしと言うのだった、敵の布陣を見て。
「敵の陣は見事にでごわす」
「川の対岸を抑えていますね」
こう言ったのは純奈だった。
「あれではです」
「迂闊にはでごわす」
「攻め入ることは出来ません」
「しかもこの度はです」
ここでまた言った純奈だった。
「空への備えもかなりですね」
「空に向けて置かれている砲も多く」
又吉もその空を見て言った。
「そして空船も飛べる者達もです」
「多いでごわすな」
「先の戦では」
美鈴とのそれをだ、又吉は北原に話した。
「空から攻めたのでしたね」
「急降下して空船を敵陣に突撃させてでごわす」
そしてとだ、北原も答えた。
「敵陣を乱してその間に一気に川を渡ってでごわす」
「勝ちましたね」
「それがあってでごわすな」
「相手も用心している様です」
「同じ手は二度と食わない」
北原は強い声で述べた。
「それはでごわす」
「兵法の基本中の基本ですから」
「相手もそうしているでごわすな」
「しかも川には」
純奈は川を凝視した、そのうえで北原に話した。
「どうもです」
「罠が仕掛けられてあるでごわすな」
「機雷や足を引っ掻ける罠が」
「確かに。敵の顔を見るとでごわす」
北原は対岸の敵軍の者達の顔を見た、見ればどの者も自分達を見て余裕に満ちた顔をしている。その顔を見てだった。
彼等の顔に余裕もっと言えば渡りたければ渡ってみろという顔を見てだ、彼もここで気付いたのだった。
「罠がある顔でごわすな」
「罠を仕掛けているからこそ」
「あの顔でごわす」
「渡ってみろという」
「一日先にここに来てでごわす」
そしてとだ、北原は言った。
「まだ渡っていないならでごわす」
「川にですね」
「仕掛けをしているからでごわす」
それ故にというのだ。
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