八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十八話 本を探しているとその六
「それでもですよね」
「貂蝉に対しては純情でしたね」
「呂布と取り合っていましたね」
「その結果殺されています」
その呂布にだ。
「そして呂布も純情で」
「一途なんですよね、あれで」
義理の父である丁原を殺して董卓についた様な裏切り者でもだ。
「恋愛には」
「そうでしたね、呂布も」
「演義の呂布よりずっと純情です」
「そして貂蝉自身も」
畑中さんはこの魔性のヒロインにも言及した、三銃士ならミレディーになるだろうか。董卓と呂布を魅了した美女だ。
「ことが果たされたら自害して」
「潔くですね」
「確かに純情ですね」
「はい、演義では死なないのに」
そのまま呂布の側室になっている。
「ですがそれでも」
「吉川英治は死なせていますね」
「それも奇麗に」
「吉川英治の作風ですね」
「恋愛は純情で」
「しかも潔いです、悪役でも敵役でもです」
どういった立場のキャラでもだ。
「爽やかで清々しいものがあります」
「三国志だと曹操なんかも」
「子を思いきりっとしていますね」
「いいキャラですよね」
「平家物語でも平清盛も」
文句なしに悪役の筈だけれどどうもそうは思えない、一族を大事にして家臣にも優しくて立派な人だったと思う。
「人情味のある大人物ですし」
「器が大きくて面倒見がよくて」
「素晴らしい人物です」
「何か僕あれなんですよね」
首を傾げさせて畑中さんに話した。
「平家物語で平清盛と平家、それに義経さんが好きです」
「では頼朝公は」
「好きじゃないです」
嫌いにかなり近い、正直なところ。
「冷酷で暗いイメージがあって」
「私もです、どうしてもです」
「頼朝さんは好きになれないですか」
「最初に読んだ時から」
その吉川英治の平家物語をというのだ。
「好きになれませんでしたし今もです」
「そうなんですね」
「ああした人が棟梁になったので源氏も」
「血が絶えたんですね」
「元々身内で殺し合う因縁がありましたが」
それこそ保元の乱の頃からだ、この乱では平家もそうだったけれど清盛さんは最低限の血で収めそれ以降平家は少なくとも清盛さんがいた頃はまとまっていた。
「為義公の時から」
「それでしょっちゅう兄弟や従兄弟で争って」
「甥殺しもあって」
その頼朝さんがしている、義経さんの子供も殺しているし従兄弟の木曽義仲の子供も殺している。平家も奥州藤原氏も一族を殲滅している人だ。
「その結果ですね」
「三代で完全にでした」
「誰もいなくなっていますね」
「三代目の実朝公で」
その頼朝さんの次男だ、もう源氏最後の人になっていた。
「これも甥に殺されていますし」
「公暁でしたん」
「その中で中心にいた御仁ですので」
「好きになれないですね」
「私以外にも好きでない人が多いと思います、義和様もそうですし」
「確かに人気はかなり低いですね」
はじめて幕府を開いて武家の時代を確立させた人でかなりの功績があるのにだ。
「創作だと大抵悪役ですし」
「それ以外ではほぼ出ないですね」
「そうですよね」
悪役で出る確率は織田信長や徳川家康以上ではなかろうか、こうした人達は主役やいい役で出ることも多い。
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