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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十八話 本を探しているとその五

「ですから」
「敵役でもですね」
「私は嫌いではないです」
「そうですね」
「はい、立派な御仁です」
「だから最後ダルタニャンとも和解していますね」
 親衛隊長で枢機卿から見れば懐方のロシュフォール卿と共にだ。
「共通の敵もいましたし」
「フランスの敵ですね」
「ハプスブルク家ですね」
「実は三十年戦争以外でフランスはハプスブルク家に勝ったことは少ないですが」
 あとはナポレオンの時だ、そしてナポレオンも最後は負けている。
「あの時は勝てました」
「逆に後は負けっぱなしですね」
「私もフランス軍と戦いましたが」
 第二次世界大戦だ、あの時日本はあの国とも戦っていたのだがイギリス軍との戦闘よりもずっと印象に残っていない。もっと言えばオーストラリア軍やオランダ軍と戦った記憶はあってもフランス軍とはになるだろうか。
「正直なところ」
「弱かったですか」
「おそらく当時日本が戦った国の中で」
「一番弱かったですか」
「何しろあっさり蹴散らしてしまったので」
 あの仏印進駐の時にだ。
「それでは」
「あの時日本結構戦ってましたけれどね、色々な国と」
「そうでしたね」
「アメリカや国民党軍に」
 そこに八路軍で共産党軍も入っていたが国民党軍に対する程戦っていない、広く言うと中国軍になるか。
「イギリス、オランダ、オーストラリア、フィリピンともですね」
「あとイギリスの植民地からの軍ともですね」
「そうですね、ですが」
「フランス軍は」
「その中で一番ですね」
「印象に残っていないですね」
「そうですね」
 本当に記憶に残っていない、あまりにもあっさりなので。
「一応戦ったんですがね」
「ソ連軍は僅かな期間でも」
「悪い意味で印象に残っていますが」
 この軍隊の場合はそうなっている。
「それでもですね」
「フランス軍本当に日本軍には記憶に薄いですね」
「あの国の勝率は低いのです」
「しょっちゅう負けてるんですね」
「戦場でも戦争自体においても」
 つまり双方でというのだ。
「あの時代とナポレオンの時代は別にして」
「その華々しい時代のお話ですね」
「はい、あとダルタニャンは最後戦死していますが」
 ダルタニャン物語の結末ではだ。
「実際は戦死はしていないのです」
「五十代位で病死してるんですよね」
「そうです、映画でも最後死んでいたりしますが」
「仮面の男ですね」
「そうです、そこは小説ですね」
「そうですね、まあそうしたことも頭に入れながら」
「読まれて下さい」
 こう僕にお話してくれた、そして畑中さんは畑中さんで本を手に取った。その本は何の本かというと。
「吉川英治ですか」
「はい」
 見れば太平記だった。
「これを読ませて頂きます」
「まさに娯楽小説ですね」
「吉川英治はまさにそれですね」
「はい、爽やかなんですよね」
 勝負や戦で人がよく死ぬ作品だけれどだ。
「悪役でも女性には純情だったりして」
「三国志の董卓もそうですね」
「女好きの筈ですが」
 三国志演義ではその好色さも悪役としてのキャラクター付けになっている、酒池肉林と暴虐の限りを尽くしているのだ。 
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