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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十八話 本を探しているとその二

「その頃のことは」
「大変でもですか」
「はい、日本はこれで終わらないとです」
「思われていましたか」
「私はそう考えていました」
 戦後の焼け野原の中でだ、空襲はあったし沢山の人が死んだしでもうこれからどうすればいいかわからなかった時代にだ。
「当時の総帥様もやりなおしだと言われて」
「一からですね」
「そう言われていましたし」
「それで畑中さんもですか」
「働きそして」
 それに加えてというのだ。
「鍛錬にも励んでいました」
「剣術と古武術のですか」
「そうしていました」
「そうでしたか」
「そしてその中で読んでそれがです」
「懐かしいですか」
「いい思い出です」
 そうだったとだ、畑中さんは僕に話してくれた。
「面白い作品でしたし」
「三銃士はそうですよね」
「あと巌窟王も好きでした」
「あの作品もですか」
「モンテ=クリスト伯ですね」
 正式なタイトルもお話してくれた。
「あの作品もです」
「お好きですか」
「楽しんで読みました」
「そうでしたか」
「名作です、痛快な」
「そういえば三銃士もですね」
 今僕が一番考えているこの作品もだ。
「痛快な娯楽作品ですね」
「左様ですね」
「モンテ=クリスト伯にしても」
 巌窟王、この作品もだ。
「主人公は陥れられますが」
「牢獄で生涯の師と出会い多くのことを学び」
「牢を出て」
 無論脱獄だ、このシーンもまた作中の見せ場だと思う。
「自分を陥れた者達に復讐を果たし」
「最後は若く美しいヒロインを結ばれますね」
「ハッピーエンドですね」
「そうです、復讐とその結末がです」
 まさにというのだ。
「痛快な作品で」
「読んでいて楽しいですね」
「ユゴーもそうですが」
「何かユゴーは原文をそのまま訳すと」
「文章が陰陰滅滅としていまして」
 つまり徹底的に暗いというのだ。
「叱られている様な」
「そんな感じになるっていいますね」
「はい、あれが今の文章なら」
「ライトノベルとか」
「明るい文章なら痛快になるのでしょうが」
 ジャン=バルジャンの活躍にしてもだ、小さい子供を名乗ったり自分のせいで無実の罪で裁かれようとしている人を自身の告白で救ったりと確かに痛快だ。
「原文が暗いそうで」
「ユゴーのそれがですね」
「それも時代でしょうか」
「何か純文学って暗いイメージがありますけれど」
「堅苦しいとかですね」
「文体のせいもあるでしょうか」
 あと学校の授業で出るせいだろうか、勉強と思うとどうもそう思えてしまったりもするのは事実だと思う。
「遊ぶ、楽しむで読むものではなくなって」
「そうかも知れないですね、ですが」
「訳文を変えてみたら」
「面白い活劇になると思います」
「ああ無情にしても」
「はい、色々危ない場面を乗り越えていますね」
 もうそれの連続だ、考えてみればルパン三世みたいにジャン=バルジャンは危機に遭ってそれを乗り越えている。
「次から来るピンチを」
「本当に凄いピンチばかりですが」 
 危うくお墓に生き埋めになりそうになったこともある。 
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