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NARUTO 桃風伝小話集

作者:人魚
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その30

 
前書き
木の葉の外にお出かけだってばよ直後の、帰還後の一幕。
その1。 

 
猫バア様の所から木の葉に帰ってきて、そろそろ解散という時でした。

「ナルト。話がある。家に寄っていけ」

出し抜けにサスケがそう言ってきました。
サスケからのお誘いに、嬉しくなって笑顔で即答します!

「うん!いいよ!」

私が頷いた途端、ちょっと穏やかに微笑んだサスケに、サスケ君の面影を見付けて更に嬉しくなりました。
しかも、あの頃よりも仲良しになれた事を実感する。
友達と言われた事も、猫バア様の武器屋さんに連れていって貰えた事も。

なんか少し照れ臭いけど、今日の一連のあれこれをしみじみと思い出して、ついでに猫バア様の言葉を思い出しました。
サスケにお金以外でお礼をしろという。

いつもサスケのご飯は私が作っているので、お礼というにはささやかすぎるし、気が向けばいつも聞いてる事では有るんですけど。
ちょっといつもの夕飯時からは外れているけれど、夕飯時と言えば夕飯時だし。

木の葉の繫華街に、商店街よりも飲み屋さんの雰囲気が強くなってきたのを、木の葉の里の門を包む夕闇に悟りつつ思い立つ。
そして、考えるまでもなく口が開いた。

「今からサスケのお家に行くなら、夕飯は買って帰った方が良いよね。口寄せ動物契約させてくれたお礼に、僕奢ってあげるよ!サスケはなに食べたい?」

私の質問に、サスケが眉間にしわを寄せた。

「…別に食えれば何でもいい」
「何でも良いじゃダメだよ。忍は身体が資本なんだから、ちゃんと栄養考えて食べないと」

ぶっきらぼうなサスケの返答に、ムッとして反論すると、同じようにムッとしたサスケが私を見つめてきました。
いつもみたいに何か言い返されるのかな、と思ってた時でした。
ふと、何か考え込むようにサスケが口許に手を当てて視線を落としました。

「サスケ?」

何時ものサスケらしくない姿に思わず小首を傾げて名前を呼ぶ。
すると、サスケが真っ直ぐに私をみて、訊ね返して来ました。

「オレの食いたい物で良いのか?」

その質問に、素直に奢られてくれる気になってくれたか、と、思わず笑顔で首を縦に振った。

意外とサスケもお金の貸し借りにはきっちりしていて、中々私に奢らせてくれないんですよねー。
友達っぽくって、私はもっとサスケに奢ったりしたいのに。
結局、奢る奢らないで私とサスケの意地の張り合いになっちゃうんで、いつも間をとって、サスケのお家で私がご飯を作るに落ち着くことが多いんだけど。

「うん!勿論!」
「……何でも?」
「僕、そう言ったよ?」

くどいくらい、念を押してくるサスケに、不審を覚えて首を傾げたその時でした。

「なら、お前の家で、お前の手料理が食いたい」

思っても見なかった事を、真っ正面から真っ直ぐに言われてきょとんとしてしまいました。
正直言って、それは全くの想定外でした。
けど。

「駄目、か?」

若干不安げにしている、珍しいサスケの姿に思う所が無いとは絶対に言いませんけどっっ!!
サスケからの思わぬデレに、思わず満面の笑みが溢れてしまいましたっ!

「ううん!全然!サスケが良いならそれで良いよっ!じゃあね、じゃあね、今日はサスケの好きな物作ってあげる!何食べたい?何作ろっか!!」

思わずはしゃいでサスケの正面に立って、サスケの両手をとって、ぶんぶんと上下に振り回してしまう。

今日はなんて良い日何でしょうかっ!
ミコトさん達が私を引き取ろうとしてくれてた事を知れて。
サスケがうちはの人達が使ってた武器屋さん紹介してくれて。
そして、それだけじゃなくて友達として私に歩み寄って来てくれたのに、更に距離を縮めようとしてきてくれました!!

サスケの方から!!!!

サスケは今まで、絶対に私のお家に遊びに来たいとか、そういう素振りは全然見せてくれなかったんですよね!
私がサスケのお家に誘われるのも稀でした。

なのに、何故かいつも気が付いたらサスケのお家で夕ご飯食べてて、それが普通になっちゃってたんだけど。
いつもなし崩しというか、なんとなくというかで。

それで気付いたら、夕ご飯はサスケのお家で食べて、次の日のサスケの朝ご飯を私が用意して帰るのが日常になっちゃったんですよね。

いつの間にか、サスケのお昼は、私の作ったお弁当だし。
サスケのお家にお泊まりした日は、そのままサスケのお家で、朝ご飯とお弁当作っちゃうし。

それに、最近じゃ、サスケのお家のお掃除とか、洗濯物とかにも手を出しちゃってなくもない。

…なんでこうなったんだったっけ?
きっかけって、何だろう。

でも、まあ、特に問題もないし、サスケの方からこんな風に要望出してくれるのって、私達はちゃんと仲良しの友達って実感できて、すっごくすっごく嬉しいです!!!!

「そうだ!じゃあさ、こないだは結局僕がサスケのお家に泊まったから、今日はサスケが僕のお家に泊まりにおいでよ!」

嬉しかったので、ヒナタを誘おうと思ってたお泊まり相手を変更して、サスケをまたお泊まりに誘って見ました。
問題は、お布団が一組しかないので雑魚寝になっちゃう事なんですけど。

その途端、サスケがぴしりと硬直した。
暫く固まって、まじまじと私の事をじいっと見詰めて来るので、思わず首を傾げたら、深い深い溜め息を吐いて、額をこづいてきました。

「このドベ。ウスラトンカチ。そう言う事は、お前の家に布団が増えてから言え。それと、何度も言っておくが、オレは男で、お前は女だ。男に気安く家に泊まりに来いとか言うんじゃねえ。家に泊めるのは女だけにしろ」

いや、泊める泊めないはそもそもですがね、ヒナタとサスケに限るなんですけど。

というか、いい加減にサスケ、私達の性別に拘り過ぎてませんかね???
そんなに念押ししないと、私が女だってこと忘れそうになっちゃうんだろうか。

そうかもしれない。
だって、私達って、ずっと一緒に居た兄弟のような物だったし。

でもサスケって、かなり真面目で古風な事を大事にしてる方だから、これってもしかして、サスケ自身のあれこれじゃなくて、私にも自覚を持たせよう的な心配してくれてるのかも???

私、今までサスケの前でも男として振る舞ってたし。
サスケは真面目だから、私が本当は女だって知って、今までこっそり気にして、私の事心配してくれてたのかもしれない。

そう言えば、そういう感じにサスケが私を気にしてくれてた証拠の記憶がちらほらと。
最近増えた、サスケからの意味不明な小言って、サスケが私の性別知ってたって事知ってから考え直したら、あれって、滅茶苦茶真っ当なサスケからの心配の気持ちだ!?

改めて、サスケからの友情と優しさに気付いて、ほっこりと胸が温かくなる。
そこに思い至った私は、素直に笑顔で口を開いた。

「家に泊めても良いなって思ってるのは、今のところヒナタとサスケだけだよ?」
「…ならいい」

私の弁解に、ぎゅう、っと眉間に皺を寄せて何か考え込んでいたサスケが、一応納得したように頷いて来ました。

微妙にまだサスケが納得してないような気はしてなくも無いけれど、サスケは頑固だから、口を割らせるのは結構手間がかかるし大変だ。
無理矢理聞き出そうとすると、反発も半端ないし。
結局ケンカになって、そのまま手合わせになって、最終的に全部うやむやになっちゃうんで、サスケが話したくなるまで放っておいた方が良いのは分かっている。

ので。

話を元に戻してみた。

「で、サスケは何食べたいの?何作ろっか!」

今の時間だと、八百屋さんはもう閉まっているし、朝の早い豆腐屋さんと魚屋さんも閉まっている。
かろうじて空いているのは、惣菜も一緒に取り扱ってる肉屋さんさんくらいか。

とはいえ、それもそんなに時間的に猶予は無さそうだが。
もしも開いていたとするならば、閉店間際で惣菜類は残ってないなと考える。

自然と店明かりが漏れ始めた繁華街へ足を向けながら、サスケに希望を改めて訊ねれば、少し考えた後に質問を返してきた。

「お前は何が食いたいんだ?」
「えっ。僕は別に何でも…」

サスケへのお礼なのに、逆に私が食べたい物を聞かれるとは思っていなかった私は、思わずサスケと同じ事を返してしまう。

しまった!

と思った瞬間でした。
サスケが不敵にニヤリと笑った。

「忍は身体が資本だ。きちんと栄養を考えて物を言え。適当に済ませようとするな。俺達は成長期でもあるんだからな」

私が言った事がそのまま、しかも、倍になって返ってきました。
思わず膨れっ面でサスケを睨み付ける。

けど、サスケは機嫌良さげな平然とした表情を取り繕っていた。
その澄ました顔が憎たらしくも腹立たしい。
けど、確かにそうなので反論が出来ません!!

むう。
むかつく。

「まあ、冗談はさておきだ。実際、何が作れるんだ?オレの家はともかく、お前の家に何があるのか、オレは知らないぞ。こんな時間だしな」

あっさりと、冗談の一言で私の不満を全部片付けて、サスケは現実的な事を言ってきました。

確かにそれもそうだ。
ちょっと家の畑の状況を頭に浮かべて、サスケに残念なお知らせを伝えておく。

「トマトはまだ食べれないよ?明後日辺りが食べ頃だから。食べられなくもないと思うけど…」

そう言った瞬間、ちょっぴりサスケの眉間にしわがよった。
残念そうな雰囲気が見え隠れしてなくもない。
サスケ、家の畑で収穫したトマト大好きですもんね!
実はちょっと期待してたりなんかしてたんだろうな、この反応だと。

「そうか。なら、本当にオレは何でもいい」

すんなりとそんな事を言ってきたサスケに、私はちょっと困ってしまった。

そういう返答が一番困るんですよね。
どうせなら美味しいって思って貰える物を作りたいって思うし、美味しいって思って貰えるのなら、食べたいって思う物を作ってあげたいとも思うし。
特に今日は、お礼って意味もない訳じゃないし…。

「何でもいいが一番困るんだけどなあ…」

サスケと並んで繁華街に向かいながら、眉をしかめて小さくぼやく。
その呟きを聞き咎めたサスケが不思議そうに訊ねてきました。

「何をそんなに悩むんだ?何でもいいって言ってるんだ。なら、考える事も無いんじゃないか?」

料理をしないサスケに、献立を考える面倒臭さはなかなか理解が及ばないんでしょうね。
そんなサスケにどうやってこの面倒さを理解して貰おうか…。

そうだ! 

「A級任務に着くカカシ先生に、任務で使用する兵糧丸を作れって頼まれて、指定は?って聞いたのに何でもいいって言われて、サスケ、どんな兵糧丸作る?」
「どんなって…」

突然の質問に面食らったようなサスケが口籠った。
そして暫く沈黙する。

「なんだ、その状況は。だが、意外と難しいな。指定が無いのも範囲が広すぎて逆に選択に困る。しかも、奴の戦闘スタイルを思えばスタミナ特化だけではなく疲労回復効果もあった方が良いだろうし、写輪眼を持っている事も考えれば、うちはの兵糧丸をベースにした方が良いだろう。そうなると、材料は…」

意外と素直に考え込んでくれたサスケに、答えを述べる。

「ご飯の何でもいいもそんな感じ。作る料理の範囲広すぎてどれ作ろうか迷うんだよね。せめて味の指定か主食は何が良いかくらい言ってくれると良いんだけど…」

ついでに探りを入れてみた時でした。
なんとなくそんなもんかと納得してくれたサスケの口から、かなり建設的な答えが返ってきました。

「なら、適当に惣菜手に入れて、飯と味噌汁だけ作ってくれ。お前の作った味噌汁をオレは食いたい」

じっと私の目を見つめながら、再びそんな事を言い出したサスケに、思わず破顔しちゃいました。

「良いよ!それなら、早く惣菜屋さんに行こうか!あ、だったら、お弁当屋さんでお弁当買って、お味噌汁だけ作るのもありだね。どっちがいい?」

でも、どっちにしても、これじゃ、やっぱりお礼にはならなさそうだから、サスケへのお礼は別なのにした方が良いですよね。
どうするのが良いのかなー?

ちょびっとサスケへのお礼について考え込んだ時でした。
当のサスケが意見を述べた。

「こんな時間だ。両方に寄って見繕った方がいいだろう」

当たり前のように、そう言われて、それもそうかと思い直す。
お惣菜屋さんにも、お弁当屋さんにも、品数はあんまり残ってないはずですし。
ついでに、サスケへのお礼も棚上げする事にします。
どうせなら、もっとちゃんとしたお礼したいし、その方がきっとサスケも喜んでくれますよね!

「それもそっか!でも、それじゃあんまりサスケへのお礼にはなんないから、お礼はまた別の何かにするね!じゃあ、行こう!」
「…ああ」

私の言葉にちょっと変な顔をしたサスケを引き連れて、私は飲み屋の明かりが増えた、里の木の葉通りの繁華街に駆け出していた。

 
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