夢幻水滸伝
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第七十五話 北上と南下その四
「そこが問題ですが」
「ここは役割分担をするでごわすか」
「と、いいますと」
「基本おいどんが日向を受け持つでごわす」
そこの進出と純奈との戦いをというのだ。
「そして又吉どんはでごわす」
「肥後ですか」
「そこを海から攻めてくれるでごわすか」
「そして薩摩から肥後を攻める兵は」
「そちらの采配も頼むでごわす」
又吉は陸の軍勢の采配は専門ではない、だがそこをあえてというのだ。
「そうしてくれるでごわすか」
「それでは」
又吉は反論することなく即答した。
「そうしていきましょう」
「それではでごわす」
「すぐにですね」
「そうして動くでごわす」
それぞれ役割分担をしてだ、そしてというのだ。
二人でだ、北原の言葉通りに攻めていった。北原はその中で純奈自身と戦うことになった。純奈は森に布陣していたが。
ここでだ、こう言った北原だった。
「さて、ここはでごわす」
「どう戦うか」
「それが問題ですね」
「そうでごわす」
まさにとだ、北原は兵達に言った。
「見ての通り敵は森にいるでごわす」
「森の中に布陣してですね」
「我々を待ち受けていますね」
「若し森に入れば」
「その時は」
「林どんは森での戦いを得意としているでごわす」
森人の弓兵としてだ。
「だからでごわす」
「下手に森に入りますと」
「倒されるのはこちらですね」
「森での戦いを得手としている相手のその懐の中に飛び込む」
「そうなっては」
「敗れるのはこちらでごわす」
こう兵達に言うのだった、今薩摩の軍勢は森を前にしている。森は彼等の前に広く広がっていてそこに敵がいるのだ。
「そうなるでごわす」
「敵の手中に入る」
「そうなってしまってはです」
「敗れるのも道理ですね」
「敵の戦いやすい場所では戦わないことですね」
「そうでごわす、だからここは攻めてはいけないでごわす」
こう言うのだった。
「いいでごわすな」
「わかりました」
「攻めたい気は山々ですが」
この辺り血気盛んな薩摩隼人らしかった、とかく彼等は攻めたがる。だが。
その彼等にだ、北原は言うのだった。
「そこを我慢するでごわす」
「棟梁が言われることなら」
「そうさせてもらいもっそ」
薩摩弁を出す者もいた、どの者も敬語だがやはり訛りは薩摩のそれだ。
「それでは」
「そうさせてもらいます」
「それではでごわす」
こうしてだった、北原は。
森に入ることなく平地で布陣していた、しかし。
対峙が二日経ったところでだ、北原の元に一つの報が入った。その報はというと。
「筑前からでごわすか」
「はい、軍勢が来ています」
「豊前及び豊後を平定したうえで」
「この日向にもです」
「向かおうとしています」
「筑前というと山田どんでごわすな」
筑前ということからだ、北原はすぐに察した。
「あの人も来たでごわすか」
「ではこの日向は」
「三つの勢力に地元の諸勢力が入り乱れる地になりますね」
「そうなってしまいますね」
「そうでごわす、これは厄介なことになったでごわす」
北原は兵達に腕を組んで言った。
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