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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十七話 鉄仮面その一

               第百八十七話  鉄仮面
 美沙さんは僕が鉄仮面のことをお話に出すとすぐに僕に言ってきた。
「あの人って王様の弟さんだったのよね」
「僕は読んでないけれど」
 こう前置きしてだ、僕は美沙さんに答えた。
「物語ではね」
「そうなってるのよね」
「そうらしいね」
「あれ本当なの?」
「鉄仮面が王様の双子の弟だったかどうからね」
「ええ、当時のフランスの王様、確か」
 美沙さんはその王様の名前も出した。
「ルイ十四世の」
「太陽王だね」
「あの人の双子の弟だったって」
「物語ではそうなってるけれど」
「あの人も実在人物っていうし」
 それでというのだ。
「あの人本当にそうだったの?」
「それがはっきりしないんだ」
 僕はこう美沙さんに答えた。
「鉄仮面の正体については」
「王様の双子の弟じゃないの」
「ちょっと調べたけれど」
 デュマの本は読んでいないけれどだ。
「諸説あるんだ」
「そうなの」
「ブルボン王家の関係者説は根強いけれど」
 当時のフランス王家のだ、尚このブルボン家は今はスペイン王家だ。そのルイ十四世のお孫さんがスペインに入ってから続いているのだ。
「それでもね」
「はっきりしたことはわかっていないの」
「実在していたのは間違いなくて」
 歴史書にもはっきり書かれているらしい。
「仮面を被せられてずっと牢獄にいたこともね」
「事実なの」
「うん、それで王族の礼を受けていたっていうし」
 食事の時等だ、監獄長自ら立って食事を受けていたらしい。
「それでもね」
「その正体はなのね」
「今も不明なんだ」
「王様の双子の弟じゃないの」
「だから本当にね」
 鉄仮面の正体はだ。
「本当に何者だったかわかっていないんだ」
「そうなのね」
「何か一回手紙を牢獄の窓から落として漁師の人が拾ったらしいけれど」
「じゃあその漁師の人知ってるの?」
「いや、拾ったらね」
 もう即座にだったという。
「監獄長が漁師さんのところに血相を変えて飛んで来たそうなんだ」
「只事じゃないのはわかるわね」
「それで御前は手紙を読んだのかって問い詰めてきたそうだよ」
 本当に只事じゃない、一介の囚人の手紙にこんなことをすることは有り得ないことだ。このことは僕にもわかる。
「そうね」
「それで漁師さんどうなったの?」
「いや、字が読めなかったそうだから」
 当時の庶民の人は大抵そうだったからこの漁師さんが文盲でも不思議じゃない。
「何が書いてあるのかさっぱりね」
「わからなかったの」
「そう監獄長さんにも答えたんだ」
 手紙が読めなかったとだ。
「そうしたら監獄長さん笑ったそうだよ」
「笑ったの」
「御前が運がいい奴だってね」
「それ読めてたら殺されてたわね」
「口封じよね」
「確実にそうなってたわね」
「この話からもわかる通りにね」
 美沙さんははっきりと言い切った。 
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