八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十六話 読書の秋その十三
「ゾルゲとか失敗してるからね」
「リヒャルト=ゾルゲですね」
「うん、あのスパイもね」
ソ連のスパイで日本で活動していた、とんでもないことにある新聞社の記者がゾルゲとグルで近衛文麿ともよく会っていた。
「有名になってるってことは」
「活動が公に出て」
「失敗しているから」
「そういえばゾルゲは」
「実際に処刑されているからね」
スパイとしてだ、そうなった。
「だからね」
「スパイは有名になっては」
「失格だよ」
「そうなるのですね」
「うん、忍者だからね」
要するにだ。
「忍者は闇に生きるとか言うじゃない」
「そして闇に死ぬ、ですね」
「うん、そうした人達だから」
「表に出てはいけないですね」
「服部半蔵は有名人だけれど」
忍者で一番有名な人だろう、風魔小太郎と並んで。
「けれどね」
「この人は」
「武士だからね、それも徳川家康に直接仕えた」
旗本として仕えたまでにだ。
「そうした人だから」
「また違いますね」
「言うならば諜報部の最高責任者だから」
CIAとかじゃ長官になる、ここまでくると大臣かそれに準ずる位の政府の高官と言っていい立場だ。
「だからね」
「有名になるのもですね」
「当然だよ」
「では」
ここで小夜子さんが出した名前はというと。
「ベリアやヒムラーですか」
「KGBやゲシュタポの」
「そうなりますか」
「まあどっちも只の情報部じゃないけれどね」
秘密警察だ、秘密警察は情報部でもあるけれどまた違う組織だ。
「弾圧とかの為の組織だから」
「忍者とはですね」
「また違うよ」
何というか国家統制とか嫌な響きがする組織になる。
「そうした組織は」
「忍ではなく」
「本当に秘密警察としかね」
「言い様がない組織ですか」
「うん、忍は一般大衆に目がいかないからね」
狙うのはあくまで敵勢力だ、幕府も危険な大名達を探る為に使っていたのであって町人や農民を見張るとかいう目的では使っていない。
「特高警察が近いだろうけれど」
「だろう、ですか」
「特高警察はお役人だったから」
警察ではあった、思想犯というか日本に浸透しようとしていたソ連が後ろにいる共産主義勢力対策の為の組織だった。
「思想統制に関わっていても」
「言論弾圧ですね」
「特定の政党の党員じゃなかったから」
共産党なりナチスなりのだ。
「全然違うよ」
「そうしたものですか」
「秘密警察はね」
「では服部半蔵さんは」
「CIAかな」
精々とだ、僕は小夜子さんに答えた。
「それ位かな」
「純粋な諜報部ですか」
「うん、秘密警察ではないよ」
間違ってもとだ、僕は言い切った。
「あの人達もね」
「そうだったのですね」
「それで半蔵さんはCIAの長官かな」
「そのお立場でしたか」
「だから有名になってもね」
自分自身が忍として動くことはないからだ、棟梁であったこの人は。
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