八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十三話 カナダという国その十一
「そう思います」
「そうですか」
「はい、ですが」
「そうした人はですね」
「残念ながら見たことがないです」
早百合さんのその目ではというのだ。
「今まで」
「そうですね、僕もちょっと」
そう言われると僕もだ。
「無言で背中で恰好良さを出す様な人は」
「見たことがないですね」
「はい、昭和の日本のダンディズムですか」
男の人のだ。
「今のお洒落でそれでも真面目さも併せ持つ」
「そんな風ではですね」
「ないですね」
「今には今の恰好良さがありますが」
それでもだ、ダンディズムにしても時代によって変わっていくので昭和には昭和のそれが存在しているのだろう。
「しかし」
「それでもですね」
「はい」
本当にだった。
「昭和の恰好良さはもうないですね」
「昭和のことですね」
「トラック野郎にしましても」
「それはそうね」
裕子さんもこう言った。
「自衛官の人と軍人さん違うでしょ」
「戦前の日本軍ですね」
「今の俳優さん自衛隊の制服は着られるわよね」
「そうですね」
言われてみれば格好良く着こなしてくれそうな人もいる、特撮系の人なんか背も高い人が多いし実に似合うだろう。
「ですが」
「それでもよね」
「日本軍の軍服は」
それが陸軍のものでも海軍のものでもだ。
「似合いそうにないですね」
「着てもね」
「何かが違いますね」
僕もこう思った」
「言葉では上手に言い表せないですが」
「それでもよね」
「本当に違います」
その何かがだ。
「時代ですかね」
「平成と昭和のね」
「違いでしょうか」
「菅原文太さんのトラック野郎をね」
まさにそれをというのだ。
「今の俳優さんが出来るか」
「出来そうにないですね」
「そうでしょ」
「はい、どうにも」
想像出来ない、今の俳優さん達にあの映画のスタイルをすることは。
「合わない気がします」
「あの映画のよさもね」
「菅原文太さんだからで」
「それを今の人が演じても」
「違いますよね」
「もう特撮だって全然違うしね」
当時の特撮と今の特撮はだ。
「本当に」
「ええ、当時の特撮と今の特撮じゃ」
昭和四十年代から五十年代初頭の特撮と平成の特撮は本当に違う、技術の問題じゃなくて演出から何から何までだ。
「別ものですね」
「だからね」
「トラック野郎もですね」
「今やったら」
リメイクしてもというのだ。
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