八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十三話 カナダという国その十
「免許のことも考えておくわ」
「そうですか」
「そしてね」
裕子さんはさらに話した。
「大型を取れる時になれば」
「大型もですね」
「取りたいわね」
「そうですか」
「ええ、本当にね」
「女性の大型ですか」
「最近結構増えてるけれどね」
裕子さんは笑ってこうも言った。
「それでも少数派よね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「トラックの運転手といいますと」
早百合さんは考える顔になってこうも話した。
「あの映画を思い出しますね」
「トラックの映画?」
「はい、トラック野郎を」
このシリーズをというのだ。
「どうしても」
「確かあの映画って」
トラック野郎と聞いてだ、裕子さんは早百合さんにこう言った。
「菅原文太さんの」
「主演ですね」
「あの人の映画だったわね」
「はい、仁義なき戦いでも主演されていて」
「あのシリーズでもね」
「主演されていてです」
「大人気だったわね」
こう早百合さんに話した。
「そうだったわね」
「恰好よかったですね」
「あの人雰囲気が違いますよね」
僕もその話に入って話した。
「そうでしたね」
「はい、何といいますと」
「独特の格好良さというか」
「少しアウトローが入っていますね」
「ヤクザ映画でしたからね」
仁義なき戦いシリーズはだ。
「トラック野郎は違いますけれど」
「ですがあれも男の人の世界ですね」
「はい、まあヤクザの世界もですね」
「音の人の世界ですね」
「男の渋みといいますか」
僕は菅原文太さんを思い出しながら早百合さんに応えた、高倉健さんと並ぶそうした風なスターだった人だ。
「ダンディズムですね」
「日本の男の人の」
「昭和のですね」
「そうですね、昭和という時代の男の人ですね」
「そう言えますかね」
菅原文太さんも高倉健さんも昭和生まれだ、戦争前に生まれてそうして昭和の中で育った人達なのだ。
「渡哲也さんもですけれど」
「昭和のその空気の中での」
「恰好良さですね」
「当時の日本の男の人ですね」
「そう言えますね、ヤクザとかじゃなくて」
どちらの人もヤクザ映画で知られているけれどだ。
「不器用であまり喋らなくて」
「そして背中で、ですね」
「何かを言う様な」
「そうした人ですね」
「ああした人ってもうそれこそ」
僕から見るとだ。
「いないですね」
「そう思いますか、義和さんも」
「はい、どうも」
「ああした無言の恰好良さがある男の人は素敵です」
早百合さんは微笑んで言った。
「私はその姿が好きになります」
「自然とですか」
「菅原文太さんにしましても」
「そして高倉健さんもですね」
「はい」
その通りという返事だった。
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