夢幻水滸伝
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第七十二話 荒んだ心その八
「こんながそうしたいんならな」
「こんなのところに来てか」
「そうじゃ、あっちの世界でもこっちの世界でもな」
「わしと一緒におってもええことないぞ」
「損得で人付き合い考える趣味はないわ」
「そうなんか」
「そんなつまらんことはするなってな」
井伏は飲みながら言った。
「ある人に言われたんじゃ」
「ある人って誰じゃ」
「わしの祖父様じゃ、自動車工場やっててじゃ」
「ほう、自動車のか」
「修理のな、八条自動車の方もな」
「そうじゃったか」
「小さな工場じゃが生活はええ」
仕事はあるというのだ。
「その祖父様に言われたんじゃ」
「損得で人と付き合うなとか」
「そうじゃ、そいつを見て付き合えとじゃ」
「そいつがええ奴だったらか」
「付き合えってな」
「金持ちとか貧乏人とか関係なしか」
「そうじゃ、そいつ自身を見ろって言われたんじゃ」
その様にというのだ。
「それでじゃ、こんなともじゃ」
「付き合うっていうんか」
「そうじゃ、わしが見たところこんなは悪い奴やない」
「ワルやぞ、わしは」
「ほなイジメやカツアゲや万引きとかしとるか」
「アホ抜かせ、そんなんする奴はド屑じゃ」
即座にだ、山本はそうしたことについてはこう返した。
「自分がやられたらどうじゃ」
「嫌に決まっとるわ」
「自分がやられて嫌じゃったら人にもせん」
「そう考えとるな」
「喧嘩はするがイジメなんぞしたことないわ」
これが山本の考えだった。
「何があってもじゃ」
「そうじゃ、そうした考えならじゃ」
「ええか」
「ああ、その言葉も振る舞いもわしは悪い奴とは思わん」
「それでか」
「わしでよかったら何時でも来い」
自分のところにというのだ。
「わしから行くこともある」
「そしてか」
「こっちの世界でも一緒にやってくか」
「手を組むっちゅうんか」
「そうじゃ、呉と広島でじゃ」
安芸の二大都市でというのだ。
「一つになってじゃ」
「安芸を統一か」
「そして山陽を掌握してじゃ」
そのうえでというのだ。
「天下を統一するか」
「この日本をか」
「そして世界を統一するんじゃ」
「世界も救うんじゃな」
「そうするか、喧嘩したいんやったらな」
それならと言うのだった。
「魔物も敵の軍勢もおる」
「そやからか」
「相当な数がおる」
それでというのだ。
「相手に苦労せんわ」
「そうじゃな、魔物も戦もな」
「こっちの世界では尽きん感じじゃ」
「それでか」
「こんなは喧嘩したいんやったらせえ」
魔物との戦い、そして人同士の戦をしろというのだ。
「それでええな」
「わかった、ほなな」
「わし等は今から一緒じゃ」
「ほな杯交えるか」
「ああ、そうするか」
こうしてだった、二人は杯を交えさせてだった。そのうえで一つの勢力になった。それからだった。
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