八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十一話 体育祭が近付きその十二
「それで、です」
「特撮の曲もですか」
「演奏します」
そうされているというのだ。
「時々ですが学校でも」
「そうだったんですね」
「仮面ライダーも戦隊も」
こちらのシリーズの曲もというのだ。
「あと時代劇の曲も」
「渋いですね」
「ヤクザものでしたら仁義なき戦いも」
「あの曲ですか」
「はい、時々かかる」
特に人が殺された時にだ、あの映画のことは殆ど知らないけれど何故かあの曲は結構聴いていて知っている。
「あの曲が好きでして。菅原文太さんも」
「あの人もですか」
「松方弘樹さんも好きです」
演じていた俳優さん達もというのだ。
「他の作品でも素敵ですのね」
「あの、ひょっとして」
そうした人達の名前を聞いてだ、僕は早百合さんに問い返した。
「早百合さん高倉健さんも」
「素敵な方でしたね」
「そうですか」
「ああした背中に筋が通っている人はいいと思います」
「そうですか」
「はい、非常に」
「何のお話かしら」
ここで裕子さんも来て言ってきた。
「高倉健さんがどうしたの?」
「あっ、ちょっと音楽のお話から」
「高倉健さんになったの」
「そうなんです」
「あの人の歌は」
裕子さんは僕の説明を聞いてこう言った。
「また渋いわね」
「ちょっとヤクザ映画の音楽のお話も出て」
「ヤクザ映画?高倉健さんね」
裕子さんはヤクザ映画と聞いてこの人の名前を出した。
「網走番外地ね。素敵ね」
「そうですよね、あの人は」
早百合さんはピアノに向かいつつ裕子さんに応えた。
「若しお傍におられたら」
「高嶺過ぎても」
「憧れますね」
「そうよね」
「実際物凄く無口で真面目で映画に真摯で」
「立派な方だって聞いてるわ」
「そうですよね、離婚されても」
一度結婚されたことは僕も知っている、ただ相手の人は美空ひばりと並んで三人娘と呼ばれた人らしいけれど誰だったか僕は覚えていない。
「その時の約束を守られて二度と結婚しなかった」
「立派よね」
「律儀で」
「ああした人は何時の時代でもいいわね」
「まさに漢という感じで」
「ううん、古いタイプだって思っていたら」
僕はお二人の会話を聞いて思った。
「これが案外」
「その古さがいいのです」
「昔のいいものを守っていてね」
「ですから私も高倉健さんみたいな人は憧れます」
「本当にいてくれたら」
こう思うと、というのだ。
「普通に憧れるわ」
「私達は」
「そうなんですね」
「恰好良過ぎるので」
「あまりにも」
「無口で背筋もピンとしていて」
「面倒見もよくて」
人間としてのそれもあってというのだ。
「本当に恰好よくて」
「憧れるわ」
「ううん、ああした人達は今でもいいんですね」
僕が今発見したことだ、このことは。
「高倉健さんや菅原文太さんみたいな人は」
「ヤクザ屋さんは駄目でもね」
裕子さんは僕に微笑んで話してくれた。
「ああしたね」
「昔気質の恰好よさの人は」
「ジン、てくるのよ」
「ジン、とですか」
「その背中を見ているとね」
それでというのだ。
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