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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十一話 体育祭が近付きその五

「武士が少なくて」
「はい、元々職人の家でした」
「そうだったんですね」
「明治までは。ですから」
「武士ではなかったんですね」
「ですが幼い頃から武士に憧れていました」
 畑中さん自身はそうだったというのだ。
「それで剣術や古武術をする様になったのです」
「武士になりたくて」
「それで、でした。そして今もです」
「剣の鍛錬をされていますか」
「そうなのです」
 まさにというのだ。
「私は」
「そうでしたか」
「まだ武士になれているとは思えませんが」
 それでもというのだ。
「剣術を磨いていき心もです」
「磨かれていくんですね」
「そうです、若し心がないと剣術は」
「暴力ですね」
「武器を持ったそれに過ぎません」
「危険なものですね」
「心なく剣道をする輩なぞは」
 それこそとだ、畑中さんは僕に確かな声で話してくれた。
「あってはなりません」
「絶対にですね」
「それは暴力に過ぎないので」
「そうした人も実際にいますね」
「ヤクザ屋さんと変わりません」
 暴力、それに過ぎない力を振るうならだ。
「まさに」
「そうですね、心がない力なんて」
「刀や拳銃もヤクザ屋さんが使うと下らないものですね」
「只の殺し合いの為の道具です」
 本当にそうしたものに過ぎなくなる。
「まさに」
「それはその人の行動にも出ます、心がないと」
「行動自体にですか」
「相手に禁じ手を使ったり竹刀を蹴飛ばしたり」
「竹刀をですか」
「それを学校の教師が行うのを見てです」
 日本の学校の先生の世界はどうなっているんだと思う時が多い、冗談抜きでいい人は学校の先生にならないんじゃないだろうか。
「私も驚き呆れました」
「畑中さんの目の前で、ですか」
「たまたまその中学校の噂を聞いて視察したのですが」
「その時にですか」
「見ました、中学生に中学生では使用が禁じられている突きを行い」
「竹刀も蹴飛ばして」
「生徒を床で背負い投げにしていました、以前義和様にもお話したと思いますが」
「そういえばそうでしたね」
 僕もこの話には心当たりがあった。
「その先生のことは」
「最早完全に暴力でした」
「それ以外の何でもないですね」
「しかも教師という強い立場です」
「それでそこまでするのは」
「権力もあるのです」
 生徒に対して絶対のだ。
「そのうえで圧倒的な体格と腕力の差、武器まで使ってです」
「暴力を振るっていたんですね」
「私は真の腐敗を見ました」
「だから怒られてですか」
「その場でその教師に勝負を挑み二度と剣道が出来ない様にしました」
「その方がいいですね、そんな教師世の中にいたら」
 僕も確信出来ることだ。
「教えられる生徒が可哀想です」
「そうした暴力を受けますからね」
「はい、本当にヤクザ屋さんみたいですね」
「全くです、しかもヤクザ屋さんは常に監視されます」
 警察にもだし市民からもだ、ここまでいつも監視される存在も世の中にはないだろう。当然のことだ。
「しかし学校の先生は違います」
「先生様ですね」
「はい、尊敬されます」
 まさに学校の先生というだけでだ。
「それも非常に」
「そこが本当に違いますね」
「これは戦前の軍人もそうでしたが」
「ああ、兵隊さんと呼ばれて」
「立派で優秀な人ばかりと思われていました」
 悪いことなぞ絶対にしないとだ、戦前の軍人さん達はそう思われていたのだ。 
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