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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica25-Bインターミドルの好敵手~Respect~

†††Sideイクスヴェリア†††

インターミドルで有名な選手のミカヤ・シェベルさんと、ヴィヴィオ達と同じように来年が初参加となるミウラ・リナルディさんが、チームナカジマのスパーリング相手としていらっしゃった。
午前はそんなお2人が、ヴィヴィオとアインハルトとスパーリングをしているのを私は見守っていましたが・・・。ミカヤさんとミウラさんはとてもお強く、ヴィヴィオは5戦2勝2敗1引き分け、アインハルトは3戦0勝という結果でしたね。

「おっす~♪」

休憩中ミカヤさんが天瞳流を始めたキッカケが、ある剣士に憧れたから、という話をしているところに更衣室のドアから「シャル!」が姿を見せた。

「ミカヤ選手とミウラ、もう来てるよね~・・・っと、おぉ居た居た!」

シャルが手を振りながら私たちの元へと歩み寄ってきました。するとミカヤさんがスッととても綺麗な所作で立ち上がりますと、「お会いできて光栄です、剣神殿」と一礼しました。シャルを見詰めるその瞳は、先ほどまで以上にギラギラと輝いていて・・・。

(ミカヤさんの憧れの刀剣士とはもしや・・・)

ミウラさんも慌てて立ち上がって、「きょ、今日はお招きありがとうございます!」勢いよくお辞儀しました。私たちも挨拶するために立ち上がろうとしたのですが、シャルは「休憩中でしょ? 座ったままで良いよ♪」と微笑み、ミカヤさんやミウラさんにも座り直すように促してから、私たちの側に正座しました。

「お疲れ様です、シャルさん。今日もジムを使わせてもらってます!」

「ん。この家に居る間はもちろん、今後も好きなように使ってもらっていいから。さて。ミカヤ選手、ミウラ。このような遠いところまで来てもらってありがとう」

「あ、いえ! そんな! 近くのステーションまでの交通費は出してもらいましたし! この屋敷まで車で送迎してもらいましたし! それにヴィヴィオさん達との試合も組んでもらえて、こちらこそありがとうございますです!」

感謝を述べて一礼したシャルに、ミウラさんが慌ててそう言いました。フライハイト家はお客様に誠心誠意の御持て成しをするのです、えっへん。

「私も、ミウラちゃんと同じ意見ですよ、騎士イリス。ここまでの道のりは快適でしたし、私個人としても、あなたとこうしてお会い出来るためとなれば、距離など関係ありません」

「そっか。今後ともチームナカジマとのスパーリングに付き合ってくれると嬉しいな。・・・じゃ、ミカヤ選手。時間もそう無いし、早速始めようか? 魔力出力とある程度の魔法不使用は一応のハンデとして制限かけるけど、それ以外は全力で行くからそのつもりでね」

「はい、それで構いません。よろしくお願いします。・・・ヴィヴィオちゃん達、先ほどの問いの答えだ。私の憧れの剣士、それが彼女、騎士イリスだ。管理局においては最強、騎士団においてはA級1位という、まさしく私が追い求める剣士なんだ」

シャルとミカヤさんが立ち上がり、試合場の中央へと歩いていきました。目を白黒させているヴィヴィオ達に、ノーヴェさんが「ミカヤちゃんへの報酬がこれだ」と言い、空間コンソールを展開して結界を円形に展開しました。それは先日の買い物の際に見た、公式リングと同じ広さです。

「キルシュブリューテ、セットアップ」

シャルが長刀型のアームドデバイス・“キルシュブリューテ”を起動させ、騎士服へと変身しました。ミカヤさんもまた、刀型のデバイス・「晴嵐」を起動させて防護服へと変身完了です。“晴嵐”は長いものが1本、短いものが1本の2刀1組ですね。2刀斬撃には気を付けないといけません。

「試合ルールはインターミドル公式DSAAルールを採用します。ライフポイントは15000。シャルさんがお昼休み中に帰ってきてるということもあって、3分3ラウンドにします。クラッシュエミュレートも発生するので注意を」

ですよね。今日は1日お仕事だと聞いていたので、どうして家に居るのかちょっと疑問でしたけど。ノーヴェさんが「では、正々堂々の勝負を。レディ・・・」と右腕を上げますと、シャルとミカヤさんが共に構えを取りました。

(シャルは珍しく鞘を構築したままですね。二刀流には二刀流なのでしょうか・・・?)

右手には“キルシュブリューテ”を、左手には鞘を順手(ミカヤさんは逆手ですが)で握っています。普段のシャルは鞘を使いませんから、私のこれまでに知っている剣技とは違うものを見られるかもしれません。ドキドキしながらノーヴェさんが腕を振り下ろすその瞬間を待つ。

「ファイト!」

ノーヴェさんが腕を振り下ろし、いざ試合開始です。

†††Sideイクスヴェリア⇒ヴィヴィオ†††

ヴィクターさんや番長に続いて、まさかのミカヤさんともお知り合いになれた今日この頃。八神道場のミウラさんともちゃんと知り合えた。初めてはお互いに自己紹介だけしてすぐにお別れしちゃったし。

(そんなわたしはミウラさんとスパークリング。魔法なしとはいえ、ううん、なしだからこその今の力量を思い知った)

ミカヤさんはアインハルトさんとのスパーリングをする為に、ノーヴェに依頼されて来てくれたんだけど、今後はわたしやコロナ、リオともスパーリングの相手をしていただけるってお話。ミカヤさんを紹介してくれたヴィクターさん達には感謝しかない。

(そんなミカヤさんが今、インターミドルと同じDSAAルールでシャルさんと試合することに)

ミカヤさんが剣士になったのはシャルさんに憧れたみたいで、そんなシャルさんと剣を交えることも、わたし達とのスパーリングを引き受けてくれた理由でもあった。わたし達の目の前で臨戦態勢で対峙してる2人は、ノーヴェの試合開始の合図をジッと待ってる。わたし達の方が緊張しちゃうような静寂の中・・・

「ファイト!」

ノーヴェが腕を振り下ろした。最強クラスの剣騎士のシャルさんと、インターミドルで都市本戦3位まで上り詰めたミカヤさんとの試合が始まったんだけど・・・。2人はその場から動かない。わたし達が固唾を呑んで見守っていると、2人は互いの動きに注意しつつすり足で間合いを計り始めた。

(間合いで言えば圧倒的にシャルさんが優位だけど・・・)

“キルシュブリューテ”の全体的な長さはシャルの身長くらいあるし、何より中遠距離の魔法を使える(それを制限したのか判らないけど)。対するミカヤさんの“晴嵐”は、目測で刃長60cmちょっと。シャルさんに一撃入れるには、その間合いをどうにかしないといけない。見学者であるわたし達の方が緊張している中、試合が動いた。

「ふっ・・・!」

「・・・っ!」

ダンッ!とわざとらしく大きな音を立てて一足飛びで接近を試みたシャルさん。ミカヤさんもまた抜刀のためにグッと腰を落として迎撃に入る準備。だけどシャルさんは、自分に有利なはずの“キルシュブリューテ”の間合いに入っても攻撃しない。

――天瞳流抜刀居合――

「水月!」

間合いにシャルさんが入ったことで、ミカヤさんはとてつもない速さで“晴嵐”を鞘から抜き放った。

――閃駆――

「っ・・・!?」

完全に捉えた。そう見えたけど“晴嵐”は空を切った。シャルさんは一瞬でミカヤさんの背後へと移動していて、振り上げていた“キルシュブリューテ”を振り下ろした。完全に間合いに中に居るミカヤさんは、「くっ・・・」右腕を振るった勢いのまま右側へと跳んで直撃を避けた。でも左側の袴の裾がザックリ斬られちゃいました。

「ふむふむ。この程度の速さなら避けられるわけだ」

「いえ。完全に運ですよ。唐竹、袈裟切り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、右切り上げ、左切り上げ、逆風、刺突。この9つの太刀筋のどれか1つが正解で、避け方もまた1つが正解でした。本当に運が良かっただけです」

そう言ったシャルさんは右肩に担いだ“キルシュブリューテ”の峰で肩をトントン叩いて、“晴嵐”を鞘に収めてもう一度抜刀の構えを取ったミカヤさんがそう返した。最初と同じようにすり足で間合いを計り始める。シャルさんはジリジリと距離を詰めてくけど、ミカヤさんは待ちの構えでその場から動こうとしない。

「シャルさん相手に先手で仕掛けることに迷ってるな、ミカヤちゃん」

「シャルは現シュベーアトパラディンのシスタープラダマンテに負け続けてはいますが、その腕はミカヤさんが仰っていた通り次元世界最強クラスです。先手の危うさを感じ取るのは正解かと思います」

ノーヴェとイクスが試合展開を見て今の攻防について話し合ってる中、「なら次は抜刀を阻止するから、対応してみて」ってシャルさんが宣言した。

「天瞳流の抜刀に不発などありえません。が、あなたならそれを可能にしてしまうかも、という恐ろしさがありますね」

シャルさんが歩き出して、少しずつ速さを上げていって最後にはダッシュ。迎撃のためにミカヤさんが抜刀の構えを取る。そして“晴嵐”の間合いに入ったシャルさんを斬るために・・・

「水げ――っ!?」

ミカヤさんは抜刀しようとした。でも抜き放たれることはなかった。シャルさんが“キルシュブリューテ”の切っ先を“晴嵐”の柄の先端に押し付けて、鞘から抜けなくしたからだ。ガキィン!と甲高い音がして、一切の動きが無くなった。と思えば、驚きで目を見開いてるミカヤさんとは違って、シャルさんは左手に持ってる鞘を振り上げて「そいっ!」と、ミカヤさんの右肩めがけて振り下ろした。

「っくぅ・・・!」

今度は避け切れなかったミカヤさんは直撃を受けて、ガクッと膝を折った。でもシャルさんのターンは終わらない。引いた鞘を今度はお腹へ向かって突き。その一撃を避けたり防いだり出来る状態じゃなかったミカヤさんは「ぐふっ!?」まともに受けて、その衝撃から足が宙に浮いた。

「風牙烈風刃!」

そこに追撃。シャルさんが“キルシュブリューテ”を振り上げて、ミカヤさんに暴風の壁を叩き付けた。宙に居るミカヤさんにはどうすることも出来ず、そのまま結界を通過して試合場の壁に突っ込んだ。

「長柄の武器の使い手の中には、こういう手段であなたの抜刀をキャンセルしてくるかもってことを、頭の片隅にでも置いておくと良いかもよ?」

「ぅく・・・。はい、しっかりと体験させてもらいました。しかし手加減された連撃で4桁も減らされるとは」

ライフが15000から12800まで減ったミカヤさんは、しっかりとした足取りでリングへと戻ってきた。クラッシュエミュレートは幸い受けてなかった。それがミカヤさんが、シャルさんに手加減されたって考えるポイントなのかも。

「鞘での打撃だからね。骨を砕くことも出来たけど、1ラウンド目の初っ端でそんなつまらない真似は出来ないでしょ? 確実に墜とすのは最終ラウンドよ」

「恐ろしい宣言です・・・ね!」

今度はミカヤさんから攻めた。タッタッタと軽い足音でシャルさんのところへ駆け出したミカヤさんは、やはり抜刀の構えを取ったまま。対するシャルさんは、右手の“キルシュブリューテ”を降ろしたままで、左手の鞘を突き出した構えだ。

「ふっ!」

ミカヤさんがさらに速度を上げて一気にシャルさんへと跳び込んだ。迎撃が来る前にシャルさんの懐奥に入り込んで、“キルシュブリューテ”や鞘を触れないようにするためだと思う。わたしだってそうすると思うから。

「む」

――天瞳流抜刀居合い――

見事に“キルシュブリューテ”と鞘の間、シャルさんの懐に跳び込めたミカヤさんは「天月・霞!」って、切り上げの抜刀技を繰り出した。シャルさんは左足をスッと後ろに下げて、ミカヤさんに対して横に体を向ける半身の構えを取ることで躱した。さらにそのまま反時計回りに一回転しての「せいやっ!」鞘による打撃をミカヤさんの背中に叩き付けた。

「かはっ!?」

その一撃で再び結界の外、本番ではリングの外にあたる場所まで吹っ飛ばされて床に落下した。今のでライフは10150ポイントまで減少。クラッシュエミュレートは、今回も発生してない。つまりシャルさんの手加減が活きてる。

「すごい・・・」

「都市本戦3位まで上り詰めた実力者でも、シャルさんには届かないということですね・・・」

「ボク、シグナムさんに聞いたことありますけど、シグナムさんでもシャルさんに勝ち越すのは難しいそうです」

「教会騎士団に属する剣騎士の中で2番目の実力だしね・・・」

ミカヤさんだって弱いわけじゃない。これまで見てきた斬撃は、わたしでもなんとか見切れてるけど、シャルさんみたく避けるにはまだ難しいレベルだ。

「シャルロッテ様直伝、龍巻閃。・・・抜刀術は一撃必倒の威力を出せる、刀使いの剣士にとっては必殺技のようなもの。でも抜刀後は基本的に隙だらけ。そこを突かれたら、天瞳流の師範代であるあなたでもその様よ。でも抜刀の速度は本当に素晴らしい。将来が本当に楽しみ♪」

「はぁはぁはぁ・・・。そこまで賞賛してもらえると、心底嬉しいですよ」

結界を抜けてシャルさんのところにまで戻ってきたミカヤさんは、それでも“晴嵐”を鞘に収めての抜刀の構えを取る。するとシャルさんも胸の前に水平に掲げた“キルシュブリューテ”を鞘に収めた。

「キルシュブリューテ、屋内戦用形態(クルツシュベーアト・フォルム)

≪うーっす≫

“キルシュブリューテ”が短くなって、ミカヤさんの“晴嵐”ほどの長さになった。さらにシャルさんは、ミカヤさんと同じように抜刀の構えを取った。

「6千年以上と続くフライハイトの剣には、魔法はあっても天瞳流みたいな型などの技は存在しない。強大な魔法を刀に付加して、その一撃必殺を以って相手を叩き伏せるから。だから剣術を使う機会なんて早々ないけど。一応はA級の1位だからね。剣術には剣術で対抗させてもらおうか」

そう言ったシャルさんに、瞳をギラリと輝かせたミカヤさんはニッと笑って「ぜひに!」って魔力を迸らせた。でもここで、ビィー!ってブザーが鳴った。1ラウンド目の終了を知らせる合図だ。ガクッと肩を落とすミカヤさん。シャルさんも「せっかく良いところだったのに」って溜息を吐いて、空間コンソールを展開。いくらか操作して結界を解除した。

「お疲れ様です、シャル」

「ありがとう、イクス」

「お疲れ、ミカヤちゃん」

「ありがとう、ナカジマちゃん」

イクスがシャルさんに、ノーヴェがミカヤさんにタオルとスポーツドリンクを手渡した。シャルさんがスポーツドリンクを飲んでるところに、「シャル。時間はまだ大丈夫ですか?」ってイクスが尋ねた。昼休みだからずっとは居られないし、シャルさんは部隊長でもあるから。

「大丈夫、大丈夫。わたし1人が抜けたところで問題ないメンバーが揃ってるし、時間だってあと20分も余裕があるし。それに今日の警邏担当エリアはこの付近だからね。心配してくれてありがとう、イクス♪」

「あ、はいっ♪」

シャルさんに頭を撫でられて、イクスは気持ちよさそうに目を細めたんだけど、わたし達の視線に気付いて「ハッ! これは、その、違うです!」って顔を真っ赤にして、シャルさんの手から頭を逸らした。

「イクス。別にそんな恥ずかしがることないと思うけど?」

「そうそう♪ 姉妹のスキンシップなんだから恥ずかしがることないじゃん」

シャルさんがイクスを背中側から抱きしめて、イクスの頭に顎を乗せた上で両手で頭の横を撫で始めて、イクスは「あぅ・・・」さらに顔を赤くして俯いた。

「ところで、ルールーちゃんとリヴィちゃんは、チームナカジマではなかったんだよね?」

「うん。チームホテル・アルピーノ! チームナカジマの合宿先にして今後のカルナージの宿泊施設として名を馳せる予定の♪」

「ホテル・アルピーノの広報班兼従業員(予定)!」

ルールーとリヴィがミカヤさんの問いに、立ち上がってポーズを取りながらそう答えた。そんな2人に「君たちとはスパーリングしなくていいのかい?」っ聞くと、2人はノーヴェを見た。チームナカジマのスパーリングの相手という理由で来てくれたミカヤさんだしね・・・。

「ミカヤちゃんがOKなら、あたしからは何も言うことはないよ。ただ、リヴィアは都市本戦レベルの強さだと考えてる。それはシャルさん達も同意してるよ」

「膨大な魔力に強烈な打撃と射砲撃、それプラスにスキルを併用したスタイルは、割と本気でヤバイ」

ノーヴェとシャルさんがリヴィを見ながらそう評した。ルシルさんも以前、砲撃番長(バスターヘッド)ハリー・トライベッカ選手の試合映像を観た上で、リヴィは番長の上位互換だって言ってたし。

「ほう。それはまた胸の躍る試合が出来そうだ。今日は15時まで暇がある。リヴィちゃん、午後からでも一度手合わせをお願い出来ないか?」

「おお! もちろんです!」

ミカヤさんから直々にお願いされるなんて羨ましいな~なんて思ってると、「インターバル終了。シャルさん、ミカヤちゃん」ノーヴェがそう知らせた。シャルさんとミカヤさんが立ち上がって、試合場の中央へと進み出す。

「結界を展開します」

空間コンソールを操作して結界を再展開したノーヴェは、「それでは第2ラウンドを開始します。レディ・・・」そう言って右腕を上げた。シャルさんもミカヤさんも抜刀の構えで対峙してる。さっきまでの穏やかだった空気が張り詰めてた。

「ファイト!」

ノーヴェが腕を振り下ろしたと同時・・・

――天瞳流抜刀居合い――

「天瞳ど――ぐうっ!」

ミカヤさんの抜刀は決して遅くない。でもそれ以上にシャルさんの抜刀が速過ぎた。ミカヤさんの“晴嵐”が半分ほど抜かれる頃には、すでに“キルシュブリューテ”が抜き放たれた後だった。鞘に半分ほど収まったままの“晴嵐”で、シャルさんの斬撃を防いだミカヤさん。右腕を上に向かって大きく弾かれたミカヤさんのがら空きな右脇腹へと、「双龍閃!」左手に持つ鞘を打ち込んだ。

「づっ・・・く・・・!」

薙ぎ払われたミカヤさんだったけど、両足でしっかりと着地してダウン判定を貰わずに済ませた。そして床を蹴ってシャルさんへと突っ込む。鞘に収め直した“晴嵐”の柄を右手で握り締めるミカヤさんは、同じように鞘へ収め直した“キルシュブリューテ”の柄を握るシャルさんの間合いへと入った。

「天瞳・・・」

抜き放たれた“晴嵐”の一撃を、シャルさんは鞘に収まったままの“キルシュブリューテ”で迎撃した。お互いにデバイスを弾かれたけど、ミカヤさんはすぐに「漣月!」と斬り返しを振るった。その一撃をシャルさんは、鞘に収まったままの“キルシュブリューテ”の刃先を下にして立てて、盾のように構えて防御。

「双龍閃・雷!」

“晴嵐”を鞘で防いだと同時に“キルシュブリューテ”を抜き放って、ミカヤさんの左肩目掛けて峰側での打撃を打ち込もうとしたけど、「まだまだ!」ミカヤさんは左手で、もう1本の短い刀を逆手で抜いて、シャルさんの打撃を防いだ。

「おおう!」

「ふっ・・・!!」

仕切り直しということみたいで一旦距離を取ったシャルさんとミカヤさん。

「早々打たれっぱなしになるつもりは・・・ありません!」

「そうでなくちゃ・・・ね!」

同時に駆け出して、シャルさんは“キルシュブリューテ”を、ミカヤさんは“晴嵐”を振るって激しい攻防を繰り広げる。でもやっぱりシャルさんが上手で、少しずつだけど確実にミカヤさんのライフを削っていってる。そんな舞ってるような綺麗な闘いに見惚れていると、メールの着信メロディが鳴った。

「あ、やべ! あたしのだ・・・!」

ノーヴェが慌てて“ジェットエッジ”をポケットから取り出して、「ヴィクターからか?」着信メロディーを止めさせた。ヴィクターさんからのメールらしくて、内容は見えないけどノーヴェの表情からして何か重要な内容のメールみたい。

「アインハルト。ヴィクターが、ジークリンデ・エレミアを確保したようだ。いつ会えるか?と聞いてきたんだが、どうする?」

一昨日のインターミドルで世界最強の10代女子の称号を得た、ジークリンデ選手との会談の予定合わせが、メールの内容だった。 
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