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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十話 まさかのことその十二

「うちの家結構結婚自由ですからね」
「そうですね、許嫁がおられる方も多いですが」
「それはご本人が決められることで」
 八条家の人間それぞれがだ、高校卒業までに何度かそうした話が来る。当然僕にもそうした話が何度も来た。
「お母さまのご実家の様なことはですね」
「ないですからね」
「だからそう思えますね」
「はい」
 僕は畑中さんに答えた。
「余計に」
「そうですね、しかしです」
「そうした考えの家もあるんですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「今も」
「そうした考えが」
「古いですがおそらくこれからもです」
「そうした考えは残りますか」
「人には住んでいる場所への思い入れがありますね」
「はい、僕もそうです」
 この神戸そして八条町が好きだ、八条学園も好きだし僕にしても住んでいる場所等への思い入れは存在している。
「あります」
「誰でもです、勿論その場所に馴染みを感じない方もおられます」
「住んでいてもですね」
「はい、ですが多くの方はそうです」
「住んでいる場所に愛着がありますね」
「それも代々なら余計にです」
「お袋の実家は代々秋田に住んでいて」
 それでだというのだ。
「その愛着もです」
「相当なもので」
「しかも名家の誇りがあり」
 このことも加わってというのだ。
「余計にです」
「秋田への思い入れが強くて」
「しかもそこに歪みも入り」
「余所者に厳しくなって」
「止様が病院に赴任された時も」
 秋田の、お袋と知り合ったその病院に赴任した時もというのだ。
「それだけで、です」
「色々あったんですか」
「はい、余所者だとみなされて」
「ううん、相当な家なんですね」
「はい、当初から止様に冷たく」
「それでお袋を結婚したいと言って」
「ましてやお母様はあちらのご当主の長女の方でした」
 畑中さんはこのことも話してくれた。
「ですから」
「余計にですか」
「はい、あちらのご当主が怒られて」
「あくまで反対してですか」
「今にも至ります」
「わかりました、何ていいますか」
 僕はここまで聞いてだ、正直腹が立っていた。それで畑中さんに眉を顰めさせてこう言ったのだった。
「嫌なお話ですね」
「だからですね」
「若し僕が何か出来たら」
 その時はだ。
「親父を助けたいというか」
「義和様ご自身がですね」
「何とかしたい位です」
「その意気ですが」
「このことはですね」
「止様が為されることです」
 他ならぬ親父自身がというのだ。
「止様とお母様、止様にとっては奥様とのことなので」
「夫婦ですか」
「愛し合う二人の」
「愛し合う、ですか」
「夫婦、男女の愛と親子の愛は違いますね」
「ですね、それは」
 このことは僕もわかる、例えるならロミオとジュリエットもっと言えばオセローとデズデモナの愛とリア王とコーデリアの愛は違う。もっとも後の二つの愛は破綻してしまって悲惨な結末になっているが。
「同じ愛でも」
「そして今はです」
「男女の愛で」
「義和様はです」
「はい、見ていることですね」
「そうされて頂ければ」
「わかりました」
 僕は畑中さんの言葉に頷いた、そしてだった。
 畑中さんとの話を終えるとだ、僕はこの夜はどうしようもなく腹が立っていたのでそれを紛らわせる為にいつも以上に飲んだ、そのうえでこの日は寝た。


第百八十話   完


                 2018・3・15 
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